東京駅の目の前、多くのビジネスマンが行きかうなかにそびえたつ、八重洲ブックセンター。店内に入ってすぐの場所に、ビジネス書が大きく展開されており、サラリーマンの姿が多く見られる。
今回は、幅広い世代のサラリーマンが興味を持つ、明日、思わず言いたくなるひとネタが得られるようなマンガのなかから、話題の4作品を八重洲ブックセンターの平山舞さんにうかがった。
八重洲ブックセンター おすすめの4冊!!
『やくみつるの小言・大事』 やくみつる
『やくみつるの小言・大事』
やくみつる 新日本出版社 \1000+税
(2014年7月10日発売)
1994年から「しんぶん赤旗」日曜版で連載が始まり、現在も続いている長寿マンガ。コメンテーターとしてもおなじみの、漫画家・やくみつるさんが描く4コママンガです。本作は、社会ネタ、政治ネタ、歳時記ネタなど、テーマ別に144作品が収録されています。
こちらは主に40代、50代くらいの男性が手に取っていますね。やくみつるさんと時事ネタは相性がいいと思いますし、よくテレビにも出ている知識人が描いているという安心感も大きいですよね。
「ら」抜き言葉、PM2.5禍、政治献金、TPPなどといった時事ネタをおもしろおかしく読めるのがいいですね。
普段マンガを出している出版社からの刊行ではないので、本屋さんで大きく扱っているところも少ないんですよね。多くのお客さんの目にとまってほしいので、当店ではワゴンで積むことで、目立つようにしています。
同じく4コマだと、当店では、『サラリーマン山崎シゲル』も人気ですね。「こんなサラリーマンがいたら絶対に嫌!」と思うような、非現実的な内容です。 現実的な『やくみつるの小言・大事』、非現実的な『サラリーマン山崎シゲル』と、4コマに親しみがある40代には、この2作品はぜひ読んでほしいです。
『ねこねこ日本史』 そにしけんじ
『ねこねこ日本史』
そにしけんじ 実業之日本社 \800+税
(2014年8月7日発売)
発売前から問いあわせの電話があったり、発売日以降は在庫が追いつかないくらい、どんどん売れていった作品です。
卑弥呼、聖徳太子、織田信長といった有名な歴史上の人物が猫の姿になって躍動する姿が、すごくかわいいです。実在の人物を忠実に再現しようと描かれたヒゲ面のおっさんよりは、猫のほうがキャラクターに愛着も湧きますしね。
同作者の『猫ピッチャー』が好きな方は、間違いなく好きだと思いますね。『猫ピッチャー』も新刊が出たので、一緒にいかがでしょうか。
猫マンガはけっこう種類が出ていて、当店でも猫人気がありますね。女性にも男性にも人気があるんです。猫をかわいいと思う気持ちに、性別は関係ありません!
歴史の参考書にはならないんですけど、ちょっと歴史を見直したいときには役立ちます。わかりやすく描かれているので、楽しく読めますよ。マンガとは別に、ちゃんと歴史の解説もついているのもいいですね。
動物好きの方には、朝日新聞出版が出した『ペットの声が聞こえたら』もおすすめです。ホロっと泣けるようなお話で、こちらも売れています。
『シュレディンガーの哲学する猫 シュレ猫とコトハ』竹内薫、竹内さなみ(作) 新崎三幸(画)
『シュレディンガーの哲学する猫 シュレ猫とコトハ』
竹内薫、竹内さなみ(作) 新崎三幸(画) \1200+税
(2014年6月15日発売)
とっつきにくいと思われがちな哲学の世界を、マンガでわかりやすく解説した本作。 いきなり哲学書を読むのはちょっと敷居が高いと思う方は、まずはこのマンガから入ってみて、興味を持ったら哲学書を読むことをおすすめします。
最近は哲学に興味を持っている若者が多いのか、ワゴンで平積みしたら売れましたね。 私自身は哲学に全然興味はなかったんですが、読んだら「ああ、なるほど」と理解できました。
絵がすごく綺麗なので、やっぱり気持ちよく読めますね。最初に表紙の絵を見て、手に取りたいという気にさせられました。
また、ストーリー自体もおもしろいんです! 主人公の女の子が恋をした相手というのが、哲学が好きな先輩で、そこから哲学の世界への扉が開きます。
エピソードごとに出てくる哲学者は変わりますが、女の子が恋愛を進めていく、という芯は変わりません。
個人的に好きなお話は、レイチェル・カーソンの章ですね。人間がよかれと思ってやったことが、じつは自然環境に対してよくないこととして、人間に返ってきます。レイチェル・カーソンというと、「沈黙の春」などで有名ですよね。教科書で読んだことがある人も多いと思います。
難しい言葉も出てくるんですが、ストーリーのなかに組み込まれていて、読みながら理解できてしまうんです。さらっと読もうと思えば、さらっと読めるんですが、考えさせられるものがありましたね。
『春風のスネグラチカ』沙村広明
『春風のスネグラチカ』
沙村広明 太田出版 \780+税
(2014年7月10日発売)
30代くらいの男性を中心に人気があります。テーマも複雑で、少しハードルが高いなと感じる人もいるかもしれませんが、はまる人はとことんはまる、ツウ好みの作品です。
作者は『無限の住人』という長編マンガを描かれている方ですが、あらためてすごい人だったんだな、と思いました。
舞台は1930年代のロシア。車椅子の少女と物言わぬ従者という2人の人物を中心に、ストーリーが展開します。読み進めていくことで、物語のピースが集まってきて、だんだん謎が解き明かされていくんです。登場人物の本名なども話の後半で判明して……喫茶店で読んでいて「おおっ」と思わず声をあげそうになりました。
何を言ってもネタバレになってしまうので、本作に関してはなかなかストーリーのことは言えないのですが……絶対に損はないと思うので、まずは手に取ってみてください。
八重洲ブックセンターからお知らせ!
八重洲ブックセンターでは、様々なジャンルの著者イベントなどを多数行っております。
詳しくはホームページをご覧ください。
余談ではありますが……最近普段は見かけない女性のお客様が多くいらっしゃいました。
というのも、『ベルサイユのばら』の新刊11巻が出たからなんです。『ベルサイユのばら』10巻セットもすごく売れています。本当にそれだけのために、当店に訪れたという感じなんですよ。
男性の方は、ふらっと立ち寄っておもしろいマンガはないかを探していくという方が多く、逆に女性の方は目的買いが多いという印象を受けます。こういった違いもおもしろいですね。