日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『新装版 パーマン』
『新装版 パーマン』 第7巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥429+税
(2016年11月28日発売)
連載開始50周年のメモリアルイヤーに刊行された「新装版」も、いよいよ完結。
じつはこの『パーマン』、藤子ファンの人にとっては常識かもしれないが、連載時期が大きく2期に分かれている。
いわゆる「旧作」と呼ばれるのが、今から50年前から約2年間にわたって連載されたもの。そして、「新作」と呼ばれるのが、二度目のアニメ化に合わせて1983年から約3年間連載されたものである。
この「新装版」では、第5巻以降がその「新作」にあたるところであり、旧作に比べると「日常マンガ」的なテイストが強まっているのが特徴。
スパイ映画さながらのハードな展開や、ミュータントのような強敵との対決もあった旧作も、それはそれで魅力的なのだが、多くの読者にとってなじみが深いのは、こちらのドジでマヌケなミツ夫=パーマン1号たちの日常と、それに輪をかけてマヌケな「全悪連」の泥棒たちを描いた新作のほうだろう。
最終巻の見どころは、まずパーマン3号の正体である星野スミレに焦点を絞ったエピソードの数々。
ミツ夫に対する淡い想いやアイドルとしての活動、そしてもちろん(?)描かれる、頻度的には『ドラえもん』のしずかちゃんに匹敵するかもしれない入浴シーンなどは、80年代の新作ならではの要素だろう。
そして最終回も、旧作のものを改稿してやや現代的にアップデートされているのだが、これは何度読んでもグッとくる名編。
何げにこの最終話、一度もアニメ化されていなかったりもするので、結末を知らない人も意外と多いのではないだろうか?
もしそうであれば、ぜひこの機会に読んでいただきたい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。