『インド夫婦茶碗』第20巻
流水りんこ ぶんか社 \745+税
本日は、男性が女性にキャンディを贈るホワイトデー。バレンタインのお返しの日ではあるのだけれど、愛の記念日ということにもなる。
そして3月14日は、歴史においても愛の記念日。1873(明治6)年、日本政府が初めて国際結婚を公式に認可したことにちなんで、“国際結婚の日”にも制定されている。
国際結婚の第1号といわれているのは、長州藩士・高杉晋作の縁者である南貞助。晋作の父親・小忠太の妹が貞助の母親で、また貞助は一時期、小忠太の養子となっていたことから、晋作の従弟で義弟という関係になる。
その晋作の代行としてイギリス留学をした貞助は、そこでライザ・ピットマンというイギリス人女性と結婚。ライザを連れて帰国して、1873年の本日、結婚を認められることとなった。
ただし、貞介がライザと結婚したのは、日英の血を引く子どもが欲しかったからで、国際人を目指してのものだったとされている。つまりは、愛のない結婚。
それなのに両者の結婚にちなんで“国際結婚の日”なんて、めでたさは半減?
ただ、国際結婚が一筋縄じゃいかないのもたしか。
そんなわけで、“国際結婚の日”に読むのにぴったりな一作は、リンコさん=マンガ家・流水りんこと、インド人の旦那さん・サッシーの結婚・家庭生活を描いた『インド夫婦茶碗』。日本人の「リンコさん」とインド人の「サッちゃん」も、結婚を決めたその理由からしてびっくりで……!?
もともと著者は、15年にわたって毎年インド放浪の旅をしていた大のインド好き(インドのあれこれを描いた『インドな日々』も必読の名著!)。
そんな彼女が、インド・バラナシの宿のスタッフだったサッシーから、突然プロポーズされることに。サッシ―がリンコさんに結婚を申し込んだ理由と、そのプロポーズの脅し……いや、殺し文句とは?
そこは読んでみてのお楽しみとして、カルチャーギャップというよりもキャラクターの衝突で、日々バタバタな流水家。
貞助とライザの場合は、子どもはできず、夫婦仲もうまくいかなかったため、結婚10年目の1883(明治16)年には離婚しているが、リンコさんとサツちゃんは2人の子どもに恵まれて、騒動はあっても幸せな毎日。
しかも本作は、既刊20巻を超えていて、日本で一番長い国際結婚エッセイマンガに。国際結婚の楽しさも、難しさも、『インド夫婦茶碗』を読めば、よーくわかるはず!
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。