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1月7日は「爪切りの日」 『ここはグリーン・ウッド』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/01/07


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

1月7日は爪切りの日。本日読むべきマンガは……。


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『白泉社文庫 ここはグリーン・ウッド』 第1巻
那州雪絵 白泉社 ¥562+税


さてさて、そろそろお正月気分を抜かなくては……。
そんな今日は、新年になって初めて爪を切る日なので、爪切りの日だそう。
七草粥をつくる日でもあるが、材料の草を浸した水に指を入れて爪を柔らかくしてから切ると、その年は無病息災である……という言い伝えがあるとか。

爪切りとは日常的な行為だが、そういえば、マンガのキャラクターが爪切りをするシーンって、あまり見ないような気もする。

ところが、そもそも「足の爪を切る美少年」を著者が描きたくて誕生していた、しかも少女マンガの男子キャラが存在する。
那州雪絵の『ここはグリーン・ウッド』に登場する池田光流のことである。
薄幸の主人公・蓮川一也の成長を軸に、名門男子校・緑都学園の緑林寮、通称グリーン・ウッドで起こる騒動を描いた作品だが、そのなかに登場する美少年キャラのひとりだ。
同じく美少年であるルームメイトの、クールで要領のよい手塚忍とは違い、光流は女難の気がある。

エピソード「乙女は夢見る」にて、光流は夢見がちな少女・聖心清美にビジュアルだけで惚れこまれ、銭湯に入ったりセクシーな雑誌を買ったりするたびにイメージが壊れたとして「ひどい!」と人前で絶叫され、うどんや牛丼すら食べられない。
寮の面々は、げんなりしながら足の爪を切る光流(この姿こそ、著者が彼の設定を練る時に浮かんだ図だという)を「乙女の夢が壊れるぞ」と冷やかすが、では美少年にふさわしい爪切りとは? との問いに、忍は腹黒さ全開の回答を提示してみせる。

この顛末は読んでのお楽しみだが、たとえば『おそ松さん』の人気ぶりを鑑みるに、2010年代の乙女たちは、爪切りどころかもっとみっともない姿を見せる男性キャラを、むしろ愛でるほどに懐が広くなったようで……。
清美ほどではなくとも、まだまだ生活感のない美少年に憧れが集まっていた80年代後半ごろに、爪を切る姿を見せた池田光流は先駆的な存在といえるだろう。
ついでに、一也のルームメイトである如月瞬もこの時代にはめずらしい「女装男子」だ。

『ここはグリーン・ウッド』はOVAのみならず(余談だがエンディング曲の「ノーブランド・ヒーローズ」は、「残酷な天使のテーゼ」を手がけた及川眠子のセンスが光る隠れた名曲!)、完結から長く経過した2008年に、実写ドラマ化もされているレジェンドであり、一度は読んでおきたいタイトルだ。

ちなみに主人公なのに影の薄い一也は、胃かいようにより1カ月遅れで入学・入寮したことも、光流や忍らのからかいの種になってしまっている。
とりあえずは、爪を清潔にし、1年の健康を願っておこう。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWEB記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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