日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『金田一少年の1泊2日小旅行』
『金田一少年の1泊2日小旅行』 第3巻
天樹征丸、さとうふみや(作) あわ箱(画) 講談社 ¥429+税
(2016年12月9日発売)
本作『金田一少年の1泊2日小旅行』は、ミステリコミックの名作『金田一少年の事件簿』の公式スピンオフ作品。
アプリ雑誌「マンガボックス」に連載され、550万ダウンロードを突破(第1巻刊行時)した人気作品が、12月発売の第3巻で完結となる。
名探偵の孫である、金田一一(はじめ)が、幼なじみの七瀬美雪とともに、「ファントム」や「雪夜叉」といった二つ名を持った連続殺人犯と対決する、というのが原作である『金田一少年の事件簿』の基本設定。
一は、真相にたどりつくと、「謎はすべて解けた!」「ジッチャンの名にかけて!」と決めゼリフを口にするのだが、それはその後ミステリマンガのひとつのフォーマットとなった。
一方、本作は『オペラ座館殺人事件』『異人館村殺人事件』といった、原作の舞台や設定を借りて、一と美雪の間で繰り広げられる、痴話ゲンカっぽいドタバタを描いたもの。
原作で重要な役割を占めたキャラクターも登場して、金田一少年たちと絡んでくるので、このあたりは原作ファンにも楽しめるところである。
原作によりそうスタイルのパロディマンガなので『1泊2日の小旅行』を読んで、ふと「あれ、ここは実際の『秘宝島殺人事件』ではどうだったけ?」と気になって、再読してみるのも、お正月にちょうどよいかもしれない。
<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。現在発売中の「ミステリマガジン」2017年1月号(早川書房)に、2016年のミステリコミックの総括を執筆。また、同誌のコミック評では、池田邦彦『グランドステーション ~上野駅鉄道公安室日常~』を紹介しています。