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1月25日は「初天神の日」 『昭和元禄落語心中』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/01/25


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

1月25日は初天神の日。本日読むべきマンガは……。


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『昭和元禄落語心中』 第8巻
雲田はるこ 講談社 ¥581+税


きょう1月25日は初天神の日である。
初天神とは、1年で最初の天神様の縁日のことで、天神様(菅原道真公)を祀っている天満宮で行われる。大阪天満宮(大阪市北区)の初天神梅花祭や、湯島天神(東京都文京区)の初天神祭(鷽(うそ)替え神事)がつとに有名だ。

この初天神へのお参りを題材にした古典落語が、「初天神」という演目である。

新しく羽織をこしらえた熊五郎は、早く初天神お参りに行きたくてしょうがない。しかし、女房からせがれの金坊を連れていってくれ、と頼まれる。子どもを連れていけば出店を見つけるたびに「あれ買ってくれ、これ買ってくれ」とせがまれるので気が進まない熊五郎であったが、当の金坊から強くせがまれ、不承不承ながら初天神のお参りに連れていくことになる。
ものを欲しがらないと約束したものの、案の定、金坊は「あれ買ってくれ、これ買ってくれ」とねだり始める。はじめは断っていた熊五郎だが、やがて根負けし、飴玉を買ってやることに。そして次には団子を買い与え、最後には凧(たこ)まで買うことになってしまう。

熊五郎は「だからおめえなんか連れてくるんじゃァなかった」と嘆くが、熊五郎は凧揚げの手本を見せるといったきり、自分が凧揚げに夢中になり、なかなか金坊に凧を触らせてくれない。
いつまでたっても凧を返してくれない父親に、金坊はいう。
「こんなことなら、おとっつぁん、連れて来るんじゃなかった」

「初天神」は最後まで演らなくとも、飴を買ったところで終えたり、団子を買ったところで終えたりと、終わりどころを調節できる噺だ。寄席の初席(元日~10日)でかかることも多い噺なのだが、初席は高座に上がる演者も多いので、この話のように時間調整が可能なところが重宝されるのだろう。

『昭和元禄落語心中』(雲田はるこ)はこの「初天神」を作中で取り上げている。
昨年に完結を迎え、『このマンガがすごい! 2017』オンナ編では7位にランクインした人気作である。現在、TBS系列ではTVアニメの第2期が絶賛放映中だ。

主人公の与太郎は、前座時代に、師匠・八雲(七代目)が歌舞伎座で独演会を開催した際に、開口一番として高座に上がり、この「初天神」を演っている(第2巻「其の五」)。
ここではさんざんな出来だったものの、のちに真打ちになってから寄席でかけている(第8巻「其の九」)。この時は寄席の席亭から「前座の頃とは比べモンならねぇな」、「父親になって実感がこもったね?」と褒められており、主人公の成長のあとが見てとれる。

落語に出てくる子どもというのは、この「初天神」のように、とにかく生意気だ。
こしゃくで憎たらしくて、しかしかわいらしい。それは子どもの実態というよりは、大人から見た子どもの理想像なのだろう。大人びているけれど、しょせんは子供。
せいいっぱいに背伸びしている姿が、かわいらしいのである。

一児の父となった与太郎(三代目助六)の「初天神」での金坊には、かわいらしさも、こまっしゃくれた感じもあり、まさしく席亭がいうように“父親としての実感”が伝わってくる高座なのだ。
最終第10巻では、与太郎以外にも、別の落語家が「初天神」を口演することになる。与太郎の落語と見比べてみれば、“成長を見守る”という落語の楽しみの一面に接することができるに違いない。

1月25日、これから受験シーズンのピークに突入する。受験生自身はいうに及ばず、子どもを持つ親も、そうでない方も、きょうは受験生の学業成就を祈って天満宮にお参りに出かけてはどうだろうか。
ご存じのとおり、天神様は学業の神様である。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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