『箱庭遊戯』上巻
田中文 集英社 \438+税
(2014年8月4日発売)
じっとりとした暑い夜に読むのがぴったりのジュヴナイルホラー。無残な死体に群がる無数の蝶はいったい何を告げているのか……手に汗握る連続殺人事件の幕開けだ。
高1の夏、淳真は思いがけなく懐かしい顔に再会する。真理は、6年ぶりにたったひとりでこの町に戻ってきたのだという。
しかし、真理の家族が引っ越していったのには重い事情があった。真理の兄で、当時小学6年生の真人(まなと)が課外授業中に森の中で行方不明になり、結局見つからずじまいだったためである。
淳真は、そのとき小学4年生。虫が好きで、子どもながらに見事な昆虫標本を作っていた真人にはよく遊んでもらっていたものだ。
“あの日”も、淳真は真人を含む6年生グループにくっついて課外授業に同行していた。ところが、いつのまにかひとりはぐれてしまい、気がついたら町をあげての大騒ぎになっていたのだ。
真理が帰って来た直後から、あのとき真人と行動をともにしていた“当時の6年生たち”が次々に襲われ始める。真理が関与しているのか。これは真人の復讐なのか。いや、そもそも真人は生きているのか。あの日、林で何が起こったのか……。
木々のざわめき、夜のしじまにうごめく虫たちも不穏な空気を醸し出す。猟奇的なムード。
謎解きへのいざないが一体となり、ぐいぐい読ませる意欲作である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」