365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
2月7日は福井県ふるさとの日。本日読むべきマンガは……。
『蔵の宿』 第1巻
西ゆうじ(作) 田名俊信(画) 芳文社 ¥552+税
2月7日は福井県ふるさとの日。
石川県・滋賀県から越前・若狭を分離して福井県が設置されたのが1881(明治14)年の2月7日であることから、福井県によって1982年に制定された記念日だ。
そこで紹介するのは、福井を舞台とした長編作品『蔵の宿』。
ヒロイン・神尾茜は、東京の一流ホテル・ウーマン。若いがおもてなしの実力は抜群で、海外の要人にも支配人にも一目置かれる存在だ。
そんな彼女の実家は、福井県の江戸時代から続く造り酒屋・蔵岡酒造である。父の急逝により後を継ぐように説得されていたものの、ホテルの仕事を心から愛する茜は断固として拒絶。
しかし、蔵を改造して旅館を営むことを思いついて……。
4棟の酒蔵のうち3棟を旅館に。残る1棟は造り酒屋に。
茜は旅館の女将として、東京でビールメーカーに勤めていた夫が酒蔵の仕事に名乗りをあげ、夫婦2人の新しい挑戦が始まった。
風光明媚とはいえ観光客が多いわけでもない田舎町での旅館経営はたやすくはない。
さらには蔵を乗っ取ろうとする親戚の妨害も激しく、丁々発止のバトルも日常茶飯事。
旅館での心あたたまるエピソードと、ビジネスの厳しい舞台裏が描かれる人間ドラマである。
作中で、「蔵の宿」があるのは「福井県蔵岡町」とされているが、モデルとなっているのは丸岡町。
茜が最初の宿泊客に、蔵岡城の姿を見せる場面があるが、これはわが国に現存する最古の建築様式を持つ天守閣が存在する丸岡城がモデル……というのは福井県人にとってはいわずもがなだろう。
越前そばや若狭湾で獲れる小鯛の料理など、福井名物も随所に登場するが、茜のおもてなしの真髄は宿泊客それぞれの心をいやす手腕にあり。
見るからに気の強そうな才媛だけど、優しく懐が深い茜。東京ではできないことをやろうと一旗揚げた、若き女将の活躍を見よ!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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