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『かくしごと』 第3巻 久米田康治 【日刊マンガガイド】

2017/03/04


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『かくしごと』


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『かくしごと』 第3巻
久米田康治 講談社 ¥600+税
(2017年2月17日発売)


久米田康治のギャグマンガのなかには、人間のトラウマや哀しみなど、精神の内奥に触れるような物語があることが多い。
『かってに改蔵』しかり『さよなら絶望先生』しかり『せっかち伯爵と時間どろぼう』しかり。

漫画家の父親・後藤可久士(ごとう・かくし)は、小学4年生の娘の後藤姫(ごとう・ひめ)に、「描く仕事」をしていることを「隠し事」している。自分の作風が下品だからだ。
超心配症の親ばかお父さん。サラリーマンということにして職場に通うふりをする。

単行本第1巻からずっと収録され続けているカラーページ。
18歳の誕生日、成長した姫がひとりで鎌倉の倉庫を訪れる。
積まれていたのは、可久士の描いていた原稿。
父が漫画家だったということを、彼女は初めて知る。
本編で描かれる漫画家・可久士と姫の生活は、18になる前に終わることが明示されているのだ。

しかも、鎌倉の倉庫と、2人が住んでいる家はまったく同じ構造。第2巻では、わざと同じように建築したことも明かされている。
仕事を隠し、過去を隠す、仮初の生活。誠実な父と純粋な娘の愛情で、しっかり成り立っている……ようには見えるが、異常さは随所から出てくる。

第3巻では、今まで出てこなかった母親の話が少しずつ浮かんでくる。
今の自宅と、18歳で姫が見た鎌倉の倉庫の関係をつなぐ、ミッシングリンク的存在だ。
後藤家には毎年ランドセルが送られてくる。かつてニュースにもなった「タイガーマスク運動」ネタだ。だが贈った人間はどうも、2人と関係がいびつらしい。
彼のアシスタントも、その正体をどうやら知っている様子。しかしだれもいわない。
何から何まで、全部かくしごと。

久米田康治は、ギャグすらも伏線にして、全部回収してしまう作家。
現時点ではわりとはっきり、今後どうなるかは描かれ始めている。
それでも、ほかにもヒントがあるのではないかと心がモヤモヤする。
姫の友だちの『さよなら絶望先生』のキャラにそっくりな東御ひな(とうみ・ひな)、古武(こぶ)シルビア、橘地莉子(きっち・りこ)も第3巻では活躍。
はたしてスターシステム的なものなのか、あるいは『絶望』ワールドとつながるのか?

連載は毎回「週刊かくしごと」という雑誌形式で、短い話をオムニバスでつめこみながら、あとがきまで毎回入っている、非常に手のこんだトリッキーな作品。
マンガ自体が漫画家ネタとコンプレックスギャグとパロディで楽しいだけに、読むごとにちらつく「その後」の寂寥感が、どうしようもなく苦しい。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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