『ギャラリーフェイク』第3巻
細野不二彦 小学館 \485+税
1950年8月29日に、文化財保護法が施行された。戦前の「国宝保存法」と「史跡名勝天然記念物保存法」を統一して見直してできた法であり、これにより重要な文化財を「重要文化財」や「国宝」として指定するようになったのである。また、なによりも文化財を「国民の遺産」と明確に位置づけたのが、文化財保護法の特徴であった。
この日を記念し、きょう8月29日は文化財保護法施行記念日とされている。
さて、数々の美術品や国宝が登場する作品といえば、細野不二彦『ギャラリーフェイク』だ。
主人公・藤田玲司は、かつてメトロポリタン美術館で「プロフェッサー」と呼ばれた凄腕のキュレーターだった。贋作専門のギャラリー「ギャラリーフェイク」を営みながら、いわくつきの真作をブラックマーケットで取引したり、美術界の闇に斬り込んでいく。
なかでも、文部省(現在の文部科学省)で国宝認定のための調査をする“国宝Gメン”知念との戦いでは、文化財を民間の保護に委ねるべきか否か、茶器などのように使用することに意味のある(用の美)文化財を美術館で管理することの是非など、美術・芸術における答えの出ないテーマが表出する。
藤田と知念、どちらの言い分にも一理あるだけに、ストーリーがどのように帰結するかも読めないスリリングさがある。
ちなみに、2014年10月15日から12月7日にかけて、東京国立博物館にて日本国宝展が開催される。
同館での国宝展は前回から14年ぶり、通算四度目。近年に国宝指定されたものも含め、日本中の国宝(建造物をのぞく)のおよそ10分の1が集結するまたとない機会だ。『ギャラリーフェイク』を片手に国宝の知識を仕入れ、芸術の秋に「現物」を眺めに出てみるのもいいだろう。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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