365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月12日は世界で初めて人工雪作製に成功した日。本日読むべきマンガは……。
『ドラえもん』 第21巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥429+税
1936年の本日は、東京帝国大学(現在の東京大学)出身の中谷宇吉郎教授によって、世界で初めて人工的に雪の結晶がつくられた日。つまりは、世界初の人工雪が誕生した日でもある。
中谷教授はその後も着氷防止の研究など、様々なかたちで低温科学の分野において大きな実績を残しており、とりわけ象徴的な本日が、今のところ何の記念日となっていないことがむしろ不思議なぐらいである。
ということで、本日は当然、雪に関するマンガをご紹介したい……のだが、それこそ雪に関する作品やキャラクターは、文字どおりに枚挙にいとまがないほど多くある。
そのなかから、ちょうど好評公開中の劇場用作品『のび太の南極カチコチ大冒険』もバッチリ雪が関連しているということで、本日はあらためて『ドラえもん』をピックアップしておきたい。
『ドラえもん』だけでも、雪にまつわるエピソードというのはかなり数多く、寒さと熱さを逆転させる「あべこべクリーム」で我慢大会をのりきる「雪でアッチッチ」(てんとう虫コミックス版第1巻。※以下、すべて巻数はてんとう虫コミックス版)や、珍しくのび太がしずかちゃんに頼りにされるオチが印象的な「はこ庭スキー場」(第6巻)、「空間入れかえ機」によって公園に北海道の雪山が出現する「大雪山がやってきた」(第19巻)などなど、いずれも忘れがたいエピソードではあるが、単行本としてオススメしたいのが第21巻。
この巻は、「雪がなくてもスキーはできる」に始まり、雪の精霊とのび太の交流を描く「精霊よびだしうでわ」で終わるという、まさに雪づくしの1冊。
かぶった人にだけ好きな深さの積雪が見える「いつでもスキー帽」で、東京タワーがほぼ埋まるほどの超豪雪という、ある意味ディザスター的な風景を見せる巻頭作品も『ドラえもん』らしいおもしろさが詰まっているが、なんといっても「精霊よびだしうでわ」は、全人類必読レベルの名編。
のび太を好きになった雪の精霊と、そのために風邪をひいて高熱を出してしまうのび太とのせつないふれあいは、まさに雪のはかなさそのもの。「もうすぐ春なんだね」と、のび太がすこし大人になるラストも心に残る……って、書いてるだけで泣けてきました。
まさにもうすぐ春のこのシーズン、みなさんもぜひご一読を。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。