『ドラえもん プラス』第6巻
藤子・F・不二雄 小学館 \429+税
(2014年12月1日発売)
「てんとう虫コミックス誕生40周年記念」と銘打たれた、8年ぶりとなる『ドラえもん プラス』の新刊。
この『プラス』シリーズは、てんとう虫コミックス版の『ドラえもん』(全45巻)には未収録の作品を集めたもので、全集版やムック本の小冊子などにも収録されているが、こうやって手軽なサイズでまとめて読めるのは、じつにありがたい。
このシリーズは、今まで未収録となっていたことにも納得?という気もうっすらする、やや過激ともいえるエピソードも少なくない。
今回は特に、しずかちゃんがメロメロになっている鼻持ちならない家庭教師をなんとかしたいのび太が、ドラえもんの出す道具に「毒薬!」とありえない期待を(それも満面の笑みで)する超問題作「にっくきあいつ」。戦時中の“赤紙”こと召集令状を皮肉ったかのような「チューシン倉でかたきうち」。ビジュアル的にデンジャラスすぎる「ごきぶりふえ」などなど、かなりブラックな笑いも含んだ21作品を収録。
最近はどうも、ほかメディアで「泣き」を前面に押し出されたり、やや「いい子」すぎる扱いの『ドラえもん』に違和感を覚えるファンなら、迷わず必読だろう。
やっぱりドラちゃんって、ナチュラルに口が悪いし、たまに「地球はかいばくだん」を出したり、「やろう、ぶっころしてやる」と血眼でスパナを手に暴走する、ブラックな側面もあるキャラクターだということは、いつまでも忘れたくないものである。
完成度という点では、単行本収録前にかなり藤子・F・不二雄自らが加筆や修正を加えているという、45巻で完結しているほうの『ドラえもん』に軍配が上がるかもしれないが、最後までギャグで突っ走る、ちょっとトガった『プラス』独特の構成は、ある意味で本来の『ドラえもん』の持ち味をよりダイレクトに味わえるのかもしれない。
そしてよくよく考えてみれば、この1冊に21話も収まっているというのが、まず奇跡的。藤子・F・不二雄の天才としか言えないコマ運びに、あらためて驚嘆せざるをえない。
やっぱり、スゴイですよ『ドラえもん』は!
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。