365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
3月13日はディエンビエンフーの戦いが始まった日。本日読むべきマンガは……。
『ディエンビエンフー 0』
西島大介 KADOKAWA ¥900+税
ラオス国境に近いベトナム北西部に位置するディエンビエンフー市。
さかのぼること63年前の1954年3月13日、第一次インドシナ戦争における最大の戦闘がこの地で始まった。
前年秋の時点で劣勢に立たされていたフランス軍は、ベトミン(ベトナム独立同盟)の主力を遠隔地に引きつけ、撃破しようと考える。
そこで候補にあがったのが、ラオスとの国境に近いディエンビエンフーだった。
ほどなくフランス軍は空挺部隊をディエンビエンフーに降下させて占領。これに対してベトミン軍はディエンビエンフーを包囲し、本格的な攻撃が幕を開ける。
3月13日から5月7日まで、56日間にわたった“ディエンビエンフーの戦い”は、ジャングルにはりめぐらせた補給路を使った人海戦術でベトミンが圧勝。フランス軍はベトナムからの撤退を余儀なくされることに。
この後、ベトナム民主共和国は独立を果たしたが、北緯17度線を境にして南北が分断されることになる。これがベトナム戦争へとつながっていくのだ。
この時代を揺るがすことになった重要な場所を冠した作品が、西島大介の『ディエンビエンフー』。
ベトナム戦争を舞台に生と死、そして恋愛を描くバトルアクションだ。連載誌「IKKI」の休刊にともないコミックスも第12巻で未完となっていたが、今年(2017年)から「月刊アクション」にて待望の続編『ディエンビエンフー TRUE END』がスタートした。
じつは本作にはプロトタイプの角川書店(現・KADOKAWA)版が存在する。2004年から2005年にかけて「comic新現実」に連載されていたが、「IKKI」同様、こちらも休刊にともなう強制終了でコミックスも2005年に1冊しか出ていなかった。
現在の『ディエンビエンフー』はこのKADOKAWA版をベースにしたもので、キャラ設定などに若干の違いがある。
2014年にはこのKADOKAWA版コミックスが『ディエンビエンフー 0(ゼロ)』として復刊。
2005年版には未収録だった特別編「The End of Europe 1954」が収録されている。
“ディエンビエンフーの戦い”が激化するなか、白兵戦でフランス軍相手に大暴れしているスーパー老婆の姿が。
彼女がひと仕事終えて家に帰ると、かわいい初孫の女児が生まれていた。その女の子こそ、『ディエンビエンフー』の寡黙なヒロイン“プランセス”である。
母親は出てこないが、会話の内容からおそらく敵方のフランス人だと思われる。あの「ンクク」を早くも発している点に注目してほしい。
このかわいい赤ちゃんが11年後には米軍の前に立ちはだかり、運命の青年・ヒカルの前に現れるのだ。
ディエンビエンフーの戦いを知り、プランセスの出生を見届けることで、“本当の最後”に向けてつっ走る『ディエンビエンフー TRUE END』への理解度は格段にアップする。
双葉社から連続刊行中の新装版コミックスとあわせて、世界一かわいくて世界一残酷な物語に、どっぷりと浸っていただきたい。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。