自己満足の世界から抜け出したことが転機となって
平間 それから4カ月連続で毎月投稿したんですけど、全然だめで。マンガを描く時間がとれるように仕事を変えたりしながら投稿はつづけていたんですが、3年くらいまるで描かなかった時期もありました。
――3年描かずにいて、それからまた描き出したのはどういう心境で?
平間 このままずっと描かずに生きていくのかと考えた時、漫画家をあきらめたことを後悔しつづける未来の自分が容易に想像できてしまったんです。そういう自分を嫌いながら生きていくことになると思ったら……もう一度描くしかないと。そうしてリスタートする気持ちで、久しぶりに描いた作品が2位に入って。それで、「これはいけるかも」と思って、またすぐに投稿したらデビューが決まったんです。
――ブランクのあとに、何が変わったのでしょう。
平間 読む人の目線を意識するようになったことだと思います。描いていなかった時期に、よくネットでうまい人のイラストを見て「すごいな」と思っていて。マンガだけでなく1枚のイラストでも見るとうれしかったり、感じるものがあったりして。私はそういう喜びをいただいているけれど、こんなふうに与えられるものを作品にこめていけば「おもしろい」ものになるのかしらと思ったんです。自己満足の世界を出て、人に見せる気持ちを持てた。それが大きかったのだと思います、今思えば。
――投稿は「花とゆめ」一筋ですか?
平間 正確にいうと一筋ではないんですよ。「花とゆめ」と「LaLa」に(笑)。白泉社一筋ですね。
――そこがいちばん親しみのある少女マンガ誌だったんですね。
平間 それ以外は考えられなかったくらいです。でも、なんの疑いもなく出してましたが、最初の担当さんに「平間さんは花ゆめっぽくないよね」って言われて衝撃を受けました(笑)。
――そこでがんばった理由、漫画家にこだわったのは?
平間 「これしかない」って思ってたので……。たぶんですけど、この職業を選ぶ人って思いこみ激しい人が多くないですか?
――いろいろな漫画家さんにインタビューしてきましたが、たしかに多いですね。
平間 気づいたら決めてたので、理由がないんですよ。理由がないからこそやるしかない。そこに理由や利点があれば、冷静に検討する余地はあったと思うんですけど。マンガを描くのってすごくつらいんですよ。寝れないし、ひどい食生活になることもあるし。そんな生活をしてまでつづけるのって「好きだから」だと思われるかもしれないですけど、好きかどうかさえもよくわからなくなってるんです(笑)。がんばること、つづけることに意味はある。あきらめちゃいけないんだ、というのが今の実感です。