綿密な取材から生まれるリアルな作品世界
――大今先生は取材マニアだと、『このマンガがすごい!2015』本誌に掲載されているインタビューでおっしゃっていましたが、小学校にも取材に行かれたんですか?
大今 行きましたよ。小学生の時にお世話になった先生が、教頭先生になってました。
――水かけたりしてないですよね?
大今 してないです(笑)
担当 教室の壁に何が貼ってあるかとか、細かく取材されてましたよ。
――キャラの設定はどうやって決めるんですか? たとえばキャラ表を作るとか?
大今 ネタ帳として使っているスケッチブックがあって、そこにキャラのラフを描くこともあります。でも、こういう性格、ということまで書き込むというよりは、思いついたセリフを書き留めておく感じです。それから、髪の毛の色はどのトーンを使うとか、そういうメモもここに書いておきます。
――作中には将也のお姉ちゃんも登場しますが、顔が描かれていませんよね。
大今 本編に関わりませんから。関わらないけど、将也の生い立ちには関わりがあるので出さないわけにはいかない。将也のあのわんぱくな性格は、姉の歴代彼氏と触れあってきたからこそですよね。大人の男とたくさん触れあったので、恐怖心というか、ためらうことがない。
――父親がいないですからね。
大今 父親がいないことは、連載会議に出すネームの段階ですでに決まっていました。これは、将也と硝子の共通点でもあります。
――島田がいつも旗を持っているのには、何か意図があるんですか?
大今 すみません、特に意味はないです(笑)。小学生が登下校の時に振る横断旗ですね。
――横断歩道によくあるやつですか。
大今 そうです。投稿作(入選作)の段階からずっと持たせてます。
担当 作品には出ていない裏設定なんですが、島田は今もヌートリアを飼っているんですよね?
大今 そうです、ヌートリアかわいいですよ。
――どのキャラも作者の分身とは思いますが、描いていて楽しかったのは?
大今 永束が震えているところは、描いていて、とても楽しいです。
――植野と話している時によく震えてますね。
大今 はい。丸いものって描いていて楽しいんです。
――丸いもの(笑)。そういえば先生、『怪盗グルーのミニオン危機一発』[注1]がお好きだとおっしゃっていましたね。
大今 はい、大好きです(笑)。あと植野も楽しいですよ、一直線な性格で、言動に迷いがないので。
――ちなみに、作中のあらゆる場面で鯉が描かれてます。具体的な場面でも、象徴的なシーンでも。鯉にはどういった意味が込められているのでしょうか?
大今 鯉にも意味はあるのですが、そこは読者の皆さんに自由に解釈していただければ、と思います。もちろん、その意味なんてわからなくても、将也と硝子の物語を読んでいただくうえでは、まったく問題ありません。
- 注1 『怪盗グルーのミニオン危機一発』 2013年に公開された3DCGアニメーションのコメディ映画。2010年に公開された『怪盗グルーの月泥棒 3D』の続編にあたる。世界一の怪盗・グルーといたずら好きの黄色い軍団ミニオンの活躍を描いた作品で、世界中で大ヒットを記録した。