「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、TVアニメ『ベルセルク』(第2期)
昨年リブートした第1期テレビアニメから少し間を置き、いよいよ始まった『ベルセルク』のシリーズ第2期。
戦乱で荒れ果て、魔物がはびこる世界を放浪する「黒い剣士」ガッツ。身の丈を超える巨大な剣「ドラゴンころし」を振るうガッツは、超常的な力を持つ「使徒」たちを狩り続ける。かけがえのない仲間たちを生贄にしたかつての友・グリフィスにたどりつくために。
原作マンガは30巻を超える大長編のため「ここをアニメ化してくれ!」というツボが人によって違い、映像化するエピソード選びにも賛否両論あるのはやむをえない。放送話数に限りがあるのだから「ぜんぶ入り」はできない相談だ。
そう前置きしてからいうと、TVアニメ第1期で主に原作の「断罪の章」が選ばれたのは個人的に「当たり」だった。主人公ガッツが「黒い剣士」になるまでを描く「黄金時代」編は王道を行く傑作には違いないが、やはりモズグス様。
真四角な顔でふだんは温厚な司教だが、異教徒に対しては拷問大好きな異端審問官だ。分厚い経典で頭蓋骨陥没チョップ! 「正義の人」のおぞましさ、光と闇が混沌とした「ベルセルク」世界を象徴する強烈な個性だが、本筋にはあまり関わってこないキャラをよくぞ映像化してくれた。
さて、放送中のテレビアニメ第2期。初回からいきなりガッツがグリフィスと再会、やはり因縁あるゾッドと激戦を繰り広げた。
原作でも時系列的に「断罪の章」の直後にあたる話だが、アニメの新章としては絶妙のチョイスだ。これ以前と以降とでは「ベルセルク」の性質が大きく変わるからだ。
まず、ガッツは「ひとり」ではなくなる。妖精パックなど仲間らしき者は前からいたが、「背中をあずけられる」という意味での戦力が増える。初代『ドラゴンクエスト』から3人パーティの『ドラゴンクエストⅡ』になるのと近い。
それにより戦闘だけではなく、「ガッツ一行」のなかのドラマが生まれる。明日なき復讐者から「守るもの」ができたガッツの内面もまた変わっていく。
そして、すでにビジュアルが公開されている「狂戦士の鎧」によるパワーバランスの補正。ガッツは並の使徒にギリギリで勝ち続けてきたが、その頂点にある「ゴッドハンド」のひとりであるグリフィスとは力の差がありすぎた。
ようやく人外の力を与える「狂戦士の甲冑」によりいい勝負にもちこめるが、引き換えにガッツは心身ともにボロボロ度を加速。ファンタジーRPG的な要素と「ベルセルク」らしい凄惨さ、どちらもアップでお得感が半端ない。
これ以上はネタバレになりそうなので控えるが、人と魔物の上に君臨するグリフィスを軸に、国家レベルの激動が描かれることも疑いない。ガッツのアクションはますます人間離れし、グリフィス側では物量がひしめく圧巻の物語が待ち受けているはず。ガッツよりも、作画スタッフの体力はもちこたえられるのか? というぐらい、期待は高まるばかりだ。
TVアニメ『ベルセルク』(第2期)を観たあとに……
今回、TVアニメ『ベルセルク』をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしい原作マンガを紹介しちゃいますよっ。
『ベルセルク』 三浦建太郎
『ベルセルク』 第22巻
三浦建太郎 白泉社 ¥524+税
(2001年12月)
圧倒的な人気を誇るダークファンタジーマンガの金字塔、『ベルセルク』。
異形の剣士・ガッツは、作中でも「それは剣というにはあまりにも大きすぎた」といわれるほどの長大な剣を操り、使徒との戦いに挑む。本作の魅力は、重厚で壮大なストーリー、深い人間描写と数知れない。しかし、なんといってもはずせないのは、マンガ表現のひとつの極地とすらいえる、作者・三浦建太郎の画だろう。
細部にまでこだわリ抜いた描きこみ、圧巻の戦闘シーン、禍々しさただよう使徒のクリーチャーデザイン、そして登場人物たち(特に主人公・ガッツ)の表情……。すべてが圧倒的に高いレベルだ。
特に、まだアニメで放映されていない、大激戦は「これほんとにマンガか!?」という大迫力。一見の価値ありである。
原作マンガのほかに、このマンガもおすすめ!
『ギガントマキア』 三浦建太郎
『ギガントマキア』
三浦建太郎 白泉社 ¥600+税
(2014年7月29日発売)
同じく三浦建太郎が描くSFロマンアクション。
主人公の大男「泥労守(デロス)」と不思議な少女「風炉芽(ブロメ)」の姿は、SF……? といった感じかもしれないが、舞台は1億年後の世界なのだ。
「ギガントマキア」の言葉はギリシア神話に登場する大戦争だが、主人公が旅する荒涼とした未来世界は、亜人種の存在もあり、まさしく「神話」的。
そんな作者が得意とする重厚な歴史を感じさせる世界観もさることながら、やはり魅力的なのがアクションシーン。
デロスが生身で、そして彼とブロメが巨人・「轟羅(ゴウラ)」への変身を遂げて繰り出す、プロレス技(デロスはいにしえの格技の使い手「列修羅(レスラ)」なのだ!)の数々はスピード感、迫力ともに満点である。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』、『超ファミコン』(ともに太田出版)など。