話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは
『このマンガがすごい! comics 響け! ユーフォニアム
北宇治高校吹奏楽部、最大の危機』
『このマンガがすごい! comics 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機』 第2巻
武田綾乃(作) はみ(画) アサダニッキ(キャラクター原案) 宝島社 ¥690+税
(2017年8月26日発売)
大ヒット小説のコミカライズ、シリーズ最終3期となる『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機』が完結巻を迎えた。
全国大会出場の切符を手に入れたにもかかわらず、部の要であるあすか先輩が退部することになり、部員たちの間には不穏なムードが漂う。受験を理由にあすかを退部させるといい張る母親の態度はかたくなだ。
とはいえ、あすか先輩ほどのしっかり者が抵抗できないのはなぜなのか?
部員たち、顧問の滝先生の夢である全国大会の結果ももちろん気になるが、本巻のみどころは大舞台を前にした登場人物たちそれぞれの想いと関係性が掘り下げて描写されている点だ。
あすかといっしょに全国大会で演奏したくて、どうにか説得しようと考える久美子。そんな久美子に、だれにも話さなかった家庭の事情と母が吹奏楽を嫌う理由を語るあすか。
部のために全力を注ぐ滝先生の秘めたプライベート、滝先生を恋い慕う麗奈の想いを描くシーンも単なる“青春モノ”としての彩りではない。これまでに描かれた部内の人間関係や問題にしてもそうで……みんながどんな気持ちを抱えて部活に臨んでいるのかを理解することこそ、みんなが「がんばれる」ことに直結しているのだから。
当然デリケートな問題についてはズケズケと踏みこめるものではなく、部員たちのちょっとした仕草や目線から仲間を思い、誠実に言葉を選ぶ様子が伝わってくるのもいい。