日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『GODZILLA 怪獣黙示録』
『GODZILLA 怪獣黙示録』
大樹連司[ニトロプラス](著) 虚淵玄[ニトロプラス](監修) KADOKAWA ¥560+税
(2017年10月25日発売)
みなさんはもう見ましたか?
『GODZILLA 怪獣惑星』。
ゴジラシリーズ初の長編アニメ映画化であり、原案・脚本を『魔法少女まどか☆マギカ』『PSYCHO-PASS サイコパス』の虚淵玄が担当することでも話題になった本作品。
20世紀末、突然地球上の各所で怪獣が出現し、人類の文明は一気に崩壊。宇宙からやってきたエクシフとビルサルドという2種族の異星人の協力もあって、人類は選ばれた1万5000人だけが宇宙船で地球から脱出し、移住先の惑星を求めて宇宙の旅へ。しかし結局人類の生存に適した惑星が見つかることはなく、人類は故郷を、そして種としての誇りを取り戻すため、再び地球に舞い戻りゴジラと戦う道を選んだのであった……というのが大まかなあらすじ。
ゴジラ対人類という、ゴジラシリーズ第1弾の王道は守りつつも、フルCGで描かれるゴジラの迫力、ホバーシップやパワードスーツなどのSF兵器を駆使した戦闘シーンなど、まったく新しいゴジラ映画の魅力にあふれていた。
しかし、どうしても納得いかないことがひとつある。
それは人類滅亡の原因となった様々な怪獣たちが冒頭で少し紹介されただけでゴジラ以外は本編にまったく顔を出さないことだ!
「世界各地で怪獣が同時多発発生!」というそんなおもしろそうな設定をなぜ触りだけで終わらせてしまうのか? そんなファンの嘆きに応えるがごとく本編公開前に発売されたのが、こちらの小説『GODZILLA 怪獣黙示録』。
ただ映画をノベライズしたという内容ではなく、こちらで語られるのは映画の前日譚。つまり怪獣が初めて出現してから人類が宇宙へ逃げ出すまでの過程が、様々な人たちへのインタビューというかたちで描かれているのだ。
そんな本作でクローズアップされる怪獣は、おもにカマキラス、ドゴラ、ヘドラ、ガバラ、ダガーラ、オルガ……全体的にチョイスが渋い! 東宝の怪獣モノだけど、ゴジラシリーズじゃない奴とかも混ざってるし!
しかし、こいつらによって引き起こされる被害はまぎれもなく甚大で、「怪獣黙示録」というタイトルに偽りなし!
怪獣がもたらす被害について語る当事者たちも、政治家や戦闘機パイロットといった怪獣と戦う立場の人間から、たまたま現場に居合わせた証券トレーダーや難民の少女といった具合にじつに多彩で、様々な角度から人類が滅亡していく様子が語られていく。
登場人物の名前や登場する兵器の固有名詞などの細かい部分に小ネタが挟まれていたり、直接名前は出てこないが鱗粉でおなじみの人類の味方の怪獣など、本編の伏線になっていそうな描写が見え隠れするのもうれしい。
また異星人であるエクシフとビルサルドの人類に対するスタンスの違いなど、映画初見時ではわかりづらかった部分も整理して説明されているので、映画の副読本としての完成度も非常に高い。
もうちょっとメジャーどころの怪獣を扱ってもよかった気もするが、そういった怪獣はきっと本編の方に譲ったのであろう。そう考えると、今後の第2弾、第3弾と続くアニメ本編のシリーズにもますます期待が持てる!
何はともあれまったく新しいゴジラシリーズ誕生を祝福するにふさわしい、古今東西様々な怪獣が大集合したファビュラスな1冊。
『GODZILLA 怪獣惑星』を観た人、これから観ようと考えている人、そして何より特撮ファンは必読ですよ!
<文・犬紳士>
養蜂家。好きな怪獣はメカキングギドラ。
Twitter:@gentledog