長年「漫画始末人」の肩書きで、数多くの名作・珍作・怪作をブログにて紹介してきた劇画狼さん。
近年は自主レーベル「おおかみ書房」を立ち上げ、ホラー劇画界の第一人者・三条友美の単行本未収録作品を書籍化するなど、出版界の殺害塩化ビニール(※知らない人は検索しよう!)とでも言うべき活躍を見せている。
そんな彼が近年注目しているのが、ホラーマンガの復刊および初単行本化作品。
90年代に一世を風靡するも、今世紀に入ってからは下火だった感の否めなかったホラーマンガ界だが、伊藤潤二8年ぶりの新刊や、ひよどり祥子(うぐいす祥子)一連の作品など、ここ1~2年で息を吹き返してきた印象が強いという。
そこで今回は、ファンの間で単行本化を待ちに待たれていた、オススメのホラーマンガ3作品を劇画狼さんに選んでいただいた。
「ひどい!マンガ」も「すごい!マンガ」も、宝島社と劇画狼が決める!?
[※2013年から2014年11月に発売されたマンガ単行本のなかから選出をお願いしています]
劇画狼さんイチオシの3作品!
『未知庵の1 三時のお水』未知庵
『未知庵の1 三時のお水』
未知庵 朝日新聞出版 ¥580+税
(2014年10月7日発売)
「ホラー作家が描くショートギャグ」とかいったものではなく、もう本当にジャンル不明のよくわからない不条理な話が、これでもかと詰め込まれた最高の1冊が、ついに単行本化。
ただただ「読者を唖然とさせること」だけに特化して作り込まれており、すべての短編の感想が「で、なんなのか?」になってしまうという、非常に説明しづらい作品なのだけれど、収録作「カナブン」のような、大人が失った純情を取り上げているような話もあるので、むげに扱えない。
今回の単行本には、「凶暴化したおっぱいに本気でぶん殴られる話」とか「耳にできたタコに墨をぶっかけられる話」とかが収録されていないので、続刊を熱望します。
『人造人間の怪 呪みちる初期傑作選1』呪みちる
『人造人間の怪 呪みちる初期傑作選1』
呪みちる トラッシュアップ ¥1400+税
(2014年8月11日発売)
長らく絶版となっており、中古本の値段も高騰化していた名作単行本『青空の宇宙円盤』と『押入のウーリー』からの、選り抜き復刻第1弾。
上記の理由で「圧倒的なおもしろさなのに人に伝えづらい作家」だった呪みちる先生の作品だが、昨年の『ライオンの首 呪みちる作品集 1996-2012』以降、こうやってどんどん入手しやすくなっているので、当時のブームを体感していない世代の読者にはぜひ手にとってもらい、この艶かしい作画と常軌を逸した発想におののいてほしい。
『もがりの首』森野達弥
『もがりの首』
森野達弥 ホーム社 ¥636+税
(2014年4月18日発売)
水木プロ正統後継者・森野先生の連作短編シリーズが、第1話から10年以上の年月をかけてようやく単行本化。
勧善懲悪&因果応報オチの手堅い作りで、読んでいてとても心地いい伝奇ホラー。
今年は9月に『怪奇タクシー』も単行本化。同じく因果応報をメインテーマにあげながらも、話も最後に安全運転意識を喚起するオチを付けるという、よくわからない快作。よくわからないけれど、こちらもオススメ。