アニメや特撮、フィギュアにゲーム、そしてもちろんマンガ……といった、いわゆる「オタク趣味」。
いまだに「男のモノでしょ?」というイメージが強いようですが、いやいやどうして。BLマンガや乙女ゲームなど、もともと女性をターゲットとした作品群はもちろんのこと、多彩なジャンルにて驚くほどの知識と情熱を持った女性の皆さんは、年々増加中とのこと。
たとえ偉い人たちが「これは本来、君たちがよろこぶような映画じゃない!」「俺たちの観るものと君たちの観るものの間には、深くて暗い河が流れているのだ!」などと言っても、『パシフィック・リム』や『サンダ対ガイラ』に燃える&萌える女の子たちは、現実に多数存在しているのだ!!
そんな日々を充実して過ごす、ある意味でじつに「リア充」な女性たちは、マンガの世界にも進出中の模様。
そこで今回は、オタク女子の生態についてやたらと詳しい……ではなく、アニメやライトノベルなどに詳しい、ライターの前田久さんに、個性的なオタク女子たちが登場するオススメのマンガを、3作品ピックアップしていただきました!!
[※2014年から2015年2月に発売されたマンガ単行本のなかから選出をお願いしています。]
前田久さんイチオシの3作品!
『干物妹!うまるちゃん』サンカクヘッド
『干物妹!うまるちゃん』第5巻
サンカクヘッド 集英社 \514+税
(2015年3月19日発売)
まずは比較的オーソドックスな「個性派オタク女子」の登場する作品から紹介しよう。
本作に登場するオタク女子、その名はうまるちゃん。ちょっと変わった名前だが、学校をはじめとして、人前で見せる外ヅラは完全無欠。成績優秀、品行方正、天下無敵の美少女JKだ。
しかし、彼女には家だけで見せる真の姿がある。お兄ちゃんのタイヘイくんに甘やかされるがまま、ジャンクフードを食い散らかし、ゲームとネットに興じ、ひたすらゴロゴロし続ける自堕落でダメダメなオタク女子としての姿が(内と外では頭身まで変化する!)。
……とはいえ、ダメ人間なりに独特なこだわりはあり、なんだかんだと、うまるちゃんは日々を充実させるための努力を惜しまない。その姿を見ていると、なぜだか気持ちが穏やかになってくる。思わず「人生を楽しむとはどういうことだろうか?」などという、普段は無意識の底に沈み込んでいるような、哲学的な問いすら浮上してくるほどだ。
つまり、うまるちゃんには瞑想級のヒーリング効果があるってことだよ! な、なんだってー!!
アニメ化も決定していることだし、一足お先に、彼女のハムスター並の癒されオーラをチェックしてみてはいかがだろうか。
そうそう、巻数が進むと、うまるちゃんにお友達が増えます。その子たちもみんな、一癖あるけど、やっぱ可愛いっすよ。
『ケンガイ』大瑛ユキオ
『ケンガイ』第3巻
大瑛ユキオ 小学館 \500+税
(2014年8月29日発売)
次に紹介するのは、生活のすべてを映画鑑賞に捧げる、ちょっと危険な雰囲気の映画オタク女子が登場する作品。
本作のヒロインである白川さんは、「こんなにもマニアックな作品が好きな自分が好き(ハート)」みたいな、昨今ネットにあふれかえる、腐れ文化系中二病の対極にある、ディープな趣味人である。
暇さえあれば映画館に通い、自宅でもひたすら映画三昧。食費を可能な限り切り詰め、ソフトや映画関係の本にバイト代をぶっこむ。趣味の合う人とはそれなりに仲良くするが、いちいち群れず、時間をムダにしない。孤高に映画を楽しむ人である。
個人的には、オタクというより「おたく」と書きたくなる。
というか、昨今ではこういう人を「オタク」扱いしたら怒られるかも知らんですね。「ただの非コミュじゃねえか」みたいな。オタクじゃなくてぼっちだろ、みたいな。
まあ、んな奴は知らんけど!
さておき、そんな白川さんに、主人公の伊賀くんは、強烈に惹かれてしまうわけなのです。
そこそこイケメンで、性格も別にフツーなんだけど、フツーな自分に飽きたらないというか、リア充の雰囲気にいまひとつなじめない彼にとっては、めんどくさい映画マニアが、無闇にキラキラして見えてしまうわけですね。あるある。
距離を詰めようとすれば手酷い返しを受け、周囲からは物好きな男と奇異の目で見られる。
しかし、ほれてしまうと、彼女のめんどくさいところが、むしろ逆にチャームポイントに思えてきてしまうし、無理解な視線には怒りが湧きあがる。いやー、青春だねえ!
ただ、いくら恋は盲目といっても、ツラいときだってないわけじゃない。ある種の恋愛の、苦しさと楽しさが、この作品には詰まってます。たまらんぜ。
あー、俺もめんどくさい恋愛がしたいなー。今となっちゃ、そんなヒマないけどさ。
そういう気持ちになる1作です。
『トクサツガガガ』丹羽庭
『トクサツガガガ』第2巻
丹羽庭 小学館 \552+税
(2015年3月30日発売)
昨今、何かと物議を醸すことの多い、「特撮オタク女子」。
最後に紹介するのは、そんな「特撮オタク女子」、仲村さんの登場する作品だ。
個人的には、やれ女には怪獣がわからないだの、どうせイケメン目当てなんだろだの、カップリング目線で特撮を汚すなだのなんだのガタガタ抜かす人たちは、いつまでたってもガキっぽさが抜けなくてイヤーね~!? オトナになんなさいよ! って感じである。
別に作品の愛し方はひとそれぞれなんだからどうだっていいじゃん。ねぇ。
……なんてことを思うのと同時に、「いや、女性にだって、熱い物語展開に燃え、ヒーローや怪人のデザインに狂喜する特オタはいるわいな、そりゃ」ということも考えるわけである。当たり前だが。
「女にはわからない」じゃなくて、昔っからずっと存在していても、「特撮は男の子のものである」みたいな偏見があったせいで、なかなか表に出てきにくかっただけだろう、と。
昔に比べればだいぶ風通しはよくなったものの、まだまだ女性の特撮ファンにとって、この世界は生きづらい。
そんな現実を、シリアス過ぎず、絵空事過ぎない、絶妙なさじ加減の現実感で切り取っているのが、この作品だ。
職場でのオタバレ、親の無神経な視線を巧妙に避けながら、日々、特オタライフに邁進する仲村さん。
食玩ひとつ、玩具ひとつ買うにも悪戦苦闘し、苦しみのなかでは特撮ヒーローの姿を思い浮かべて踏ん張るの彼女の姿には、笑いながらも、思わずときどきもらい泣き。共感度マックス。
今回の記事の本題とはズレるが、女児向け戦闘美少女アニメ好きのコワモテのアンちゃんを出してくるあたりのバランス感覚のよさも、じつにうれしい。
自身のオタク性に悩む人も、そうでない人も、この作品を読むことで、何か感じるところがあるのでは。そこから、今以上にオタクにとって幸せな世界が生まれるのではなかろうか。
目指せ、世界平和! そんな気持ちで、猛プッシュする次第であります!!