「ヤングアニマル」(白泉社)で連載され単行本シリーズ累計130 万部を突破した大ヒットマンガ『職業・殺し屋。』(西川秀明)を原案にした実写映画が完成!!
プロの殺し屋として育てられたキリ。ともに暗殺者として訓練し、妹のようにかわいがっているルイが、ある日、凄惨な事件に巻き込まれ深い傷を負ってしまう。復讐を誓ったキリは、闇の殺人請負サイト「殺し屋。」に狙いをつけ、リョウを始めとする殺し屋たちを監視していた。そしてついに、ヤツが現れた――。
女優・釈由美子が『修羅雪姫』(2001年)以来封印していた本格アクションに挑戦する。監督は、ハリウッド仕込みのアクションで、『スーパー戦隊』シリーズをはじめ、国内外の特撮・アクション界で絶大な支持を誇る坂本浩一。
原作ファンも大注目の本格アクション映画『KIRI―「職業・殺し屋。」外伝―』が6月20日(土)に公開されることを記念し、主演の釈由美子さんにスペシャルインタビューを敢行しました!
14年ぶりに本格アクション映画主演!
トレーニングシーンはオールアドリブ!?
――『修羅雪姫』(2001年)[注1]以来のアクション映画主演ですが、オファーを受けたポイントを教えていただけますか?
釈 もともと古武道[注2]をやっていたので、本格的なアクション映画にまた出演するのを心待ちにしていました。お話しをいただいた時は運命的なものを感じましたね。
――古武道は黒帯をお持ちなんですよね! 今回のアクションはいかがでしたか?
釈 古武道は間合いをとる動きですが、今回はナイフアクションの接近戦がメインでした。坂本監督[注3]が稽古場に見にきてくれて、私の動きを確認して今回のアクションを考えてくれましたね。
――坂本監督は、女性をきれいに撮る監督だといちファンとして思います。女優さんサイドから見てどうですか?
釈 ありがたいです。安心してどんなカットでも委ねることができます。
――トレーニングするシーンはとてもセクシーですよね。
釈 あのトレーニングシーンはオールアドリブなんですよ! 普通は動きの指導が坂本監督からあるんですが、このシーンだけは丸投げで、「どうぞ!」と(笑)。なので古武道の「息吹」の型やヨガのストレッチをやりました。
――ブルース・リー[注4]や松田優作[注5]の映画を彷彿とさせるシーンでしたが、釈さん自身は……。
釈 やってる時はどうなるかわからなかったです(笑)。ラッシュ[注6]を見て、ハイスピード[注7]であんなにセクシーに撮ってるとは思わなかったですね。
――――サービスシーンでした! ありがとうございます!
釈 あざとくない色気が出たと思っています。女性スタッフからも「かっこいい!」といってもらえましたしね。
この作品は、父に捧げたい
――原案がマンガ『職業・殺し屋。』【注8】ですよね。今回の役を演じるうえで、原作はお読みになりましたか?
釈 あえて読みませんでした。私の演じた殺し屋のキリはもともと原作にないキャラクターなので、役作りのために読まないようにしてました。
――今回演じたキリはどんなキャラクターですか?
釈 ただ強いだけではなく悲しい宿命を背負って、孤独・儚さを兼ね備えた人物ですね。監督と話しあってキャラクターを固めていきました。
――インスパイアされた作品があるとうかがいましたが……。
釈 『ニキータ』[注9]です。私のNo.1映画でありバイブルです。ニキータの逃れられない宿命に自分自身も共感するところがありました。
――釈さん自身にも逃れられない宿命があったんですか?
釈 そうですね……。一番戦っていた時期にこの作品の撮影に入ったので宿命を感じました。
――何があったかお聞きしても大丈夫ですか?
釈 はい、私事で恐縮ですが、この作品のオファーがあった時、私の父が末期ガンだと発覚したんです。最初はこの仕事を断ろうと思ったんですが、父に「行ってこい」と背中を押されてオファーを受けました。
――そういう状況で撮影に臨まれていらっしゃったんですね。
釈 ちょうどこの作品の撮影初日に父も入院して。私の心の焦りがキリに乗り移って、一緒に戦っていたような気がします。この作品は父に捧げよう、父に見てもらいたいと思っていました。
――お父様はこの作品をご覧になったのでしょうか。
釈 いいえ、今年1月に他界したので、かないませんでした。
――お父様とはどのようにすごされてきましたか?
釈 晩年は親子2人で登山していました。2013年4月から山の番組(NHK BS1『実践! にっぽん百名山』)をやらせていただけるようになって。それまでは父と犬猿の仲だったのですが、山の番組がきっかけで和解しましたね。
――お父様も山が好きだったんですか?
釈 はい。もともとは父の影響ですね。幼少の頃からあちこちの山に連れてってもらってました。生きてる間は父との時間を大切にしましたし、亡くなってからは父が登りたかった山を登っています。毎回、背中に遺影を背負って登っています。
――今もいっしょに登られてるんですね。
釈 山は、唯一、父と繋がれるというか、感じることができるところですね。
――釈さんにとって山の魅力はなんですか?
釈 日常のことを忘れさせてくれるので、チャージされますね。それと山には厳しい側面があるので、謙虚な気持ちになります。自分を見つめる時間になりますし……生きてることを実感します。
――どんな山に登るんですか?
釈 3000メートル級の北アルプスにも登りますよ!
――すごい! オトコ前ですね。
- 注1 『修羅雪姫』 小池一夫原作、上村一夫作画による同名マンガを2001年に映画化したもので、グラビアアイドルとして活躍していた釈由美子のアクションが大きな話題となった。それ以前には1973年に梶芽衣子主演で映画化され、翌1974年に続編も製作されるなど大ヒットした。
- 注2 古武道 日本の伝統的な武芸・武道の総称。徒手や、刀剣や槍などの武具を用いた武術のほか、水泳や乗馬なども含まれる。主に明治維新前の武道を指すため、柔道などは含まれない(現代武道)。
- 注3 坂本監督 『KIRI―「職業・殺し屋。」外伝―』の監督・アクション監督を務める坂本浩一のこと。現存する日本三大特撮TVシリーズである「仮面ライダー」シリーズ、「ウルトラマン」シリーズ、「スーパー戦隊」シリーズのすべてでメガホンをとる、今もっとも注目を集める監督のひとり。主な監督作品に『トラベラーズ 次元警察』『赤×ピンク』『白魔女学園』など。
- 注4 ブルース・リー 今も世界中から愛される香港のアクションスター。初主演映画『ドラゴン危機一髪』は香港映画の歴代興行記録を塗り替え大ヒット。その後『ドラゴン怒りの鉄拳』~『燃えよドラゴン』に主演し、世界がカンフーアクションに注目するように。しかし、『死亡遊戯』製作中に32歳の若さでこの世を去った。
- 注5 松田優作 今なお熱狂的ファンを持つ伝説的俳優。TVドラマ『太陽にほえろ!』のジーパン刑事として人気を博したあと、『狼の紋章』で映画デビュー。『最も危険な遊戯』をはじめとする「遊戯」シリーズや『蘇える金狼』『野獣死すべし』などに主演し、ハードボイルドなアクションスターとして大活躍する。『ブラック・レイン』で念願のハリウッドデビューを飾るが、公開された年にガンのため他界。享年40。
- 注6 ラッシュ ラッシュ試写のこと。撮影した映像をつなげたものを試写することを指す。
- 注7 ハイスピード ハイスピードカメラのこと。高速で映像を撮影するため、通常のスピードで再生するとスローモーションで映像が再生される。
- 注8 『職業・殺し屋。』 西川秀明のマンガ。2000年から「ヤングアニマル嵐」(白泉社)にて連載がスタートし、その後、「ヤングアニマル」にて2010年まで連載された。2011年から2014年にかけ「ヤングアニマル嵐」にて『新 職業・殺し屋。斬 ZAN』が連載された。アンダーグラウンドの闇サイト「職業・殺し屋。」で殺しの依頼を受けるイカレた殺し屋たちの物語。
- 注9 『ニキータ』 1990年制作のフランス映画。監督はリュック・ベッソン。暗殺者として訓練されたニキータがひとりの男と出会う、切ない女性アクション映画。