日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『孤独のグルメ』
『孤独のグルメ』第2巻
久住昌之(作) 谷口ジロー(画) 扶桑社 ¥920+税
(2015年9月27日発売)
松重豊主演のドラマ版は、ついにシーズン5を数えるほど大人気となっている『孤独のグルメ』。
マンガのほうは、なんと18年ぶりの新刊である。
連載は不定期ながら「週刊SPA!」で続いていたのだが、じつは昨年あたりから新刊がアナウンスされていながら、延期が重なりまくってやっとの刊行。ファンにとっては、まさに「待ちわびた」と言うにふさわしい第2巻である。
ご存じの方も多いとは思うが、ドラマ版の『孤独のグルメ』は、ほとんどのエピソードがマンガ版とは無関係の、独立したオリジナルストーリー。
主人公の井之頭五郎のキャラクターも、タイトルどおりに「ひとりでメシを食べる」というところ以外はかなりキャラが違う……はずだったのだが、いつの間にやらけっこうドラマ版のゴローちゃんに寄ってきてるような気もうっすら。
第1巻の頃はひたすら寡黙な印象が強かったのだが、今回収録されているエピソードは、ドラマ版ばりに駄ジャレ&オヤジギャグ増量となっている。さすがに18年も間が空けば、人は変わるということなのだろうか?
とはいえ、そもそもオヤジギャグの多いドラマ版のゴローちゃんは、ほかのいくつかの久住昌之作品のキャラの集合体のようなところはあったので、それほど違和感があるわけではない。
むしろ、ず~~~っと単行本が出なかった間もゴローちゃんは淡々と日々の食事を続けていたかのようゆるやかな変化であり、少し人間として丸くなったと思えば納得できるだろう。
いやまぁ、うっかりアームロックに至る事案も収録されているので、ちっとも丸くなってないのかもしれませんけどね。
それはさておき、食事のチョイスに関しては安心の「いつもどおり」。
学食や市役所の食堂といった、「ごく普通」の場所でのたのしみの発見は、いよいよ極まってきた感もある。
さらに、マンガ版ならではの“やらかし”も健在。未読の方のためにオチは伏せておくが、とある店で気になっていた「お茶漬け」を後日食べに行くくだりなどは、とくにマンガ版ならではの味わいと言えるだろう。
「気になった料理を頼みすぎて、食べきれずに残す」という、ドラマから入ったファンにはちょっと驚かれそうな失敗も含めて、より等身大のゴローちゃんをたっぷりと堪能していただきたい。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。