話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『翔んで埼玉』
『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』
魔夜峰央 宝島社 ¥700+税
(2015年12月24日発売)
先日、マツコ・デラックスと関ジャニ村上信五の人気テレビ番組『月曜から夜ふかし』でも、「埼玉の衝撃マンガ」として話題ふっとう中の『翔んで埼玉』。
2016年2月の「このマンガがすごい!」ランキングオンナ編にて、圧倒的な票数を獲得。ランキングを運営する宝島社の作品のため、正式ランキングからは除外されたが、大きな反響を呼んだことはたしかだ。
『パタリロ!』で知られる魔夜峰央が、1982年から83年にかけて「花とゆめ」(白泉社)に発表していたもので、それを収録した単行本『やおい君の日常的でない生活』(白泉社)は現在絶版。某ショッピングサイトでは1万円近くのプレミア価格が付くなど、ファンの間では長らく幻と化していた。
その名(迷?)作が、ついに復刻されることになったのだ。
埼玉育ちの美少年・麗麻美が東京都民の埼玉弾圧に立ち向かう――というストーリーは、この本を楽しむ場合、あくまで「オマケ」でしかないだろう。
「ご存知ない方も多いと思いますが 東京都のとなりに埼玉県という所があります」という、慇懃無礼なナレーションに始まり、とにかく全編にわたって、あの手この手で埼玉をディスり倒す! ずばり「埼玉dis」こそが、エンタテイメントとしての本作の真のテーマだ。
最近やっと電気が通ったものの、テレビはまだ珍しくて庄屋様の家でしか見れず、県民はいまだに税金ではなく年貢を取り立てられ、東京へ行くには通行手形が必要――という設定下の埼玉。
大半の県民は死ぬ前に「一度山手線に乗ってみたかった……」と無念を口にし、運よく手形を入手できても、東京での行動は厳しく制限され、ひどい埼玉差別がまかり通っているという。