海根さんの体になったあゆみの表情も秀逸。
こぼれるような三白眼に長すぎる前髪とニキビ、でっぷりした体。少女マンガ内では異色の外見だからこそ、素直で屈託のないあゆみの見せるリアクションはひとつひとつ新鮮。
前向きで明るいあゆみのチャームに引っぱられて、どんどん彼女がかわいらしく見えてくるはずだ。
新鋭・川端志季の初連載作として「別冊マーガレット」で発表された本作。『君に届け』の爽子や『俺物語!!』の猛男ら少女マンガの主人公像を更新してきた王道「別マ」の系譜はここにも引き継がれている。
さて、よだかは被害者でありつつ虫を食べる加害者でもあるという転換を、宮沢賢治が静かに書いていたのを覚えているだろうか。
まったく異なる語り口だが、クルクルとひっくり返っていくひとりの人間の見え方の不思議さは『宇宙を駆けるよだか』のなかでも描かれている。
意外性とキラキラした輝きを兼ね備えた、少女マンガの今を感じる快作だ。
<文・横井周子>
ライター、少女マンガ研究家。『池田理代子の世界』、『女子校育ちはなおらない』、『ユリイカ 2016年3月増刊号 総特集*江口寿史』などに執筆。藤本由香里・福田里香・やまだないと著『大島弓子にあこがれて』ではやまだないとインタビューを担当。