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『銀河英雄伝説』(田中芳樹・作、藤崎竜・画)ロングレビュー! 『封神演義』の藤崎竜が、あの銀英伝をリメイク!! 独特の切り口で銀河の歴史がまた1ページ!

2016/03/30


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物語の舞台は、銀河系の隅々まで人類が進出した遠い未来だ。
宇宙は専制君主制の銀河帝国と、民主共和制の自由惑星同盟が二分し、150年以にわたり延々と戦いを続けている。

そんな乱世において、眉目秀麗たる金髪の軍人、ラインハルト・フォン・ミューゼルは、皇帝の寵姫として奪われた最愛の姉を奪い返すために、皇帝の治下にある銀河帝国を、そして銀河すべての世界を手に入れようと果敢に挑んでいく……。

ラインハルト、そして『銀英伝』最大のテーマはこのひと言につきる……。

ラインハルト、そして『銀英伝』最大のテーマはこのひと言につきる……。

さて、いよいよその第1巻をひもといていこう。
この壮大なるスペースオペラは、銀河帝国サイドから始まる。冒頭に描かれるのは、幼年のラインハルト・フォン・ミューゼルと、その後生涯無二の親友となるジークフリード・キルヒアイスの出会いである。

原作では、上級大将となった「常勝の天才」ラインハルトと、永遠のライバル「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリー准将が初めて艦隊指揮を任され戦うところから始まっていたのだが、藤崎版の本巻では、OVAアニメの外伝で詳細に語られる幼年期のエピソードも含め、きっちりと時系列にまとめた編年体で描かれ、銀河の歴史と2人の英雄の人生全体における起承転結がわかりやすくなっている(だろうと思われる)のがおもしろい。

また、幼年期から順序立てて語られているせいか、ラインハルトとキルヒアイスがじつにいきいきとした表情を見せる描写が続くのも新鮮な感覚だ。
ご存じの方も多いだろうが、OVAアニメや過去のコミカライズ作品では、いずれも比較的「静的」なシーンが多い。動的なイメージ表現を得意とする藤崎竜の絵が、一度は完成したテーマをどう料理するかには最初から興味をかき立てられたが、早くもこうした点に新表現が反映されているのだ。

それは、ある種の“歴史書”として描かれてきた過去作品に比べ、人物をより等身大で身近に感じさせ、かつ物語や読み物の感を強く押し出している印象を与え、新たな読みごたえを生み出している。

ラインハルトも少年らしい感情があふれ出す……。それはより読者の共感を深めるだろう。

ラインハルトも少年らしい感情があふれ出す……。それはより読者の共感を深めるだろう。

一方、第1巻では、早くももうひとりの英雄、ヤン・ウェンリーの存在も、後ろ姿のみながら登場する。
それはまだほんの一瞬だが、ヤンの才能の片鱗を垣間見させる形での登場となっている。

旧来のファンの多くは「早くヤン特有のあの語りを聞きたい」と思ってしまうに違いない。少なくとも筆者は十分な期待と興奮を覚えた。

今後、様々な個性派、有名キャラが続々登場するであろうが、彼ら彼女らがどのような描かれ方をするのだろうとワクワクドキドキしながら読むのもまた楽しい。

ラインハルトとヤンのご尊顔登場! この2人を見たとき、ああ帰ってきたと実感。

ラインハルトとヤンのご尊顔登場! この2人を見たとき、ああ帰ってきたと実感。

人は常に手の届きえぬものを追い続けるというが、2人の英雄には宇宙に瞬く星々を、本作には新たなる銀河の歴史、そして栄光を、がっちりと刻んでもらいたい!



<文・沼田理(東京03製作)>
マンガにアニメ、ゲームやミリタリー系などサブカルネタを中心に、趣味と実益を兼ねた業務を行う編集ライター。

単行本情報

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