ガッツの過去を描く「黄金時代」編では、かつての親友であり宿敵のグリフィスもガッツを含む「鷹の団」の仲間を犠牲にした「蝕」により、ゴッドハンドになるまでの生き様が与えられた。
そんな暗黒時代の背景にある人々の狂乱を描いた「断罪編」では、神の正しさを疑わないモズグスという名キャラクターも誕生。
その過程で再受肉(地上での肉体を得る)して、覇王として国盗りを始めたグリフィスが事実上の主人公と言っていい「千年帝国の鷹」編。
かたやガッツも旅のなかで仲間を得て、守るべきものを見つける……。おそらく三浦も読者と同じ目線で「この物語はどこに行くのだろう」と興味を持ち、筆も引っ張られるのだろう。
描きこみの密度もまったく落ちることなく、続きをひたすら待つしかない……とファンの悟りのなかに投げこまれた最新第38巻。
山が大きく動いている!
元「鷹の団」メンバーで「蝕」を逃れたリッケルトがグリフィスと再会する。その場所は、グリフィスが築いたな王都のファルコニア。
地下から蘇った神の都市は、人と魔物とが種族を超えて共存する理想郷だ。見かけの平和を支えるのは、血に飢えた使徒たちからなる新生・鷹の団……という壮大さに、またもやすさまじい筆力が注がれている。
グリフィスの変節を許せないリッケルトは、凛として訣別。いろいろあって、かつての敵国だったクシャーンの残党たちと仲間になって新天地を目指す。
生存率が限りなく低い世界で生き延びた懐かしの面々が、恩讐を超えてパーティを組む様に涙ぐむ。今日まで『ベルセルク』につきあってきてよかった……。
その頃ガッツは、ようやく魔の手が届かない妖精島に到着。愛するキャスカを預けるために、不信感を抱く妖精たちとのひと悶着がこれから! というところで、次巻へのヒキ。
え、ガッツとグリフィスがまた会うのはしばらく先のこと? リッケルトのチームも増えて、ますます展開が遅くなるのでは……。
そんな先の心配を上回る「まだ続きが読める」という幸せ。長生きするモチベーションがあがったということで、ポジティブにとらえたいところだ。
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』、『超ファミコン』(ともに太田出版)など。