青は、物心ついた時から、自分の性に違和感を持っている。というほど、まだ表立って自覚はしていないのだが、これまでに女の子を好きになったことがあり――それを口に出してはならないことは知っている。
「おれ」という一人称が自然で、成長するほど“女子たち”の話題についてけなくなる。そんな青が唯一自分らしくいられるのが、「バスケが好き」というシンプルな“理由”を持つ者が集まる部活なのだ。徹底して人と交わりたがらない飛鳥が、キャプテンに罵倒されようが、休まず体育館にやって来るのも、同じ理由からなのだろう。
根はいいヤツなのだが、いかにもキャプテンらしい“人格者”ではない金子。
ムードメーカーでみんなに信頼されているガードの樹里。
バスケセンスも実力もそなえているけれど、気まぐれでマイペースな2年の葉月。
チーム内の不協和音に心を痛める、心やさしいナツ。
それぞれのキャラクターも立っていて、どのシーンからも個々の性格が見えてくるあたりは、新人離れした技量である。
スポーツにかぎったことではないが、言葉のうえで「みんな、ひとつになろうよ」というだけで、そうなれるものではない。 では、何が必要か? それを口にし、体現してみせたのが青なのである。
新緑高校女子バスケ部のその後、そして始まったばかりの青と飛鳥の物語のつづきを、ぜひ読みたいと思うのだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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