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【日刊マンガガイド】『ふれなばおちん』第10巻 小田ゆうあ

2014/09/10


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『ふれなばおちん』第10巻
小田ゆうあ 集英社クリエイティブ \457+税
(2014年8月25日発売)


今、一番ドキドキさせてくれるマンガ。女性、特に結婚生活の長い女性にとっては、間違いなくそうだろう。
小田ゆうあが描く『ふれなばおちん』は、TVドラマも人気を博した著者の代表作『斉藤さん』と同じく主婦たちの物語で、題材は不倫。ただ、不倫と言い切って片付けてしまうには、あまりにもピュアでせつない感情が描き出されている。
もう夫や子ども以外の誰かに目を向けることはないと思っていた主婦が、年下の男性に想いをつのらせていく。そのドキドキに加えて、人目を忍ぶつきあいが周囲に気づかれてしまいそうになるドキドキ。ドラマ=想いと、ストーリー=展開の両方で読ませる作品だ。

美容にもファッションにも構わずにいる、主婦・上条夏。家族は、屈託なく毎日笑いながら暮らしている夏を愛しながらも、その無頓着さには少々呆れ顔だ。
そんな夏に対して、夫の義行はある行動に出る。なんと部下の契約社員・佐伯龍に、妻を誘惑してほしいと頼んだのだ。佐伯は貧乏劇団の役者をしている苦み走った二枚目で、女心をくすぐるのがうまく、「ふれなばおちん」=触れた女性は絶対に落とすという男だ。佐伯は、社宅に入れてもらうことを条件に、たやすいことだと頼まれごとを快諾する。しかし夏のあたたかい人柄にふれた佐伯は本気になってしまい……。
妻が女らしさを取り戻してくれればいい、という義行の行動が夏だけでなく、佐伯も変えてしまうことになる。

佐伯に想いをぶつけられて、忘れていた恋愛感情を取り戻す夏。2人っきりでは会えず、家族の目もあってメールや電話もできないなか、夏と佐伯は手紙で想いのやりとりをかわしていく。触れ合ったのは、手と唇だけ。いまどき学生でもありえない、不器用で純粋な恋愛だ。

最新第10巻では、夏を守れるのはあくまで夫として隣にいる義行だけだと思い知らされた佐伯が別れを告げる。沖縄の地で、本格的に劇団の活動を行うことに決めたのだ。
恋をしたことで一度は痩せて、身奇麗になっていた夏だったが、今は佐伯と分かれた悲しさとストレスから昔の姿に戻ってしまい、涙しつつもスナック菓子をほお張りながら、不倫のすえ、家族を捨てた友人と長電話。「ね 小牧さん 昔々さ どうやって失恋から立ち直ったっけ どうやってたっけ もぉゼンゼンわかんないの 忘れちゃったよ」。十代に向けた少女マンガにはまずない、不様で滑稽にさえ映るシーンが胸をうつ。
大人に沁みるせつなさとリアリティも本作の大きな魅力だ。

10巻のラストでは、あるものを通じて、夏は佐伯と再会することになる。想いの行く先はもちろん、ストーリーがここからどう転んでいくのかというところでも目が離せない。
ちなみに、本作。筆者は発売日直後に近所の大型書店2軒に回ったのだけれど、すでに品切れとなっていた。TVドラマでも主婦の恋というテーマが注目されているが、少なくともマンガにおいて、『ふれなばおちん』が熱烈な支持を受けていることは間違いなさそうだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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