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『やれたかも委員会』 第1巻 吉田貴司 【日刊マンガガイド】

2017/08/05


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『やれたかも委員会』



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『やれたかも委員会』 第1巻
吉田貴司 双葉社 ¥880+税
(2017年6月30日発売)


17歳の時に女の子の部屋で2人きりになった日、高校時代に海辺で人妻をおぶって歩いた日、ネットで知りあった彼氏持ちの女の子と飲み明かした日……。
『やれたかも委員会』は、そんな「結果的にできなかったけど、やれたんじゃないか」というエピソードを、3人の審査委員が聞き、やれたかどうかを判定していくマンガだ。

判定するといっても、メインはあくまでそれぞれの体験談。
各エピソードには取材協力が入っており、実体験をもとにした部分が多いのだろう。
女の子の部屋の本棚に並ぶ安野モヨコ、南Q太、魚喃キリコといった作家たちの作品や、カラオケで歌うGLAYの「HOWEVER」といったディテールが生々しい。
そして、3人の委員は最後に「やれた」「やれたとは言えない」の札をあげるだけで、エピソードに対してああだこうだと論評を加えることはあまりない。
唯一、「やれたとは言えない」の札をあげることが多いキャラクター・月満子だけがやれなかったんじゃないかという理由をぽつりと加えるだけだ。
その切れ味もすばらしいが、基本的には「やれたかどうか」の真実探し以上に、それぞれの思い出の滋味深さを楽しむような作品なのだ。

『やれたかも委員会』のおもしろさは、委員のひとり・能島明のこのコメントに集約されている。

「『やれたかもしれない夜』は人生の宝です」
「後生大切になさってください」

語られるエピソードはどれもやれなかったものだ。
だけど、もしも実際にやれてしまっていたら、その話はとたんに陳腐になる。
可能性の神秘を失い、ただの一夜の思い出になり、下手をすれば思い出すこともなくなっていただろう。
あるいは、思い出を振り返るキャラクターたちも、年を重ねた現在なら「やれたからといってなんだというのか」と思うかもしれない。

『やれたかも委員会』が照らすのは、「たかがセックス」に血道をあげ、テンパっていた頃の神秘の光のようなものなのだ。



<文・小林聖>
主にマンガについての記事などを手がけるフリーライター。マンガ情報サイト・ネルヤ主催。年間だいたい1000冊くらいマンガを買ってます。
「nelja」

単行本情報

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