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『メゾン・ド・ねこ』 有永イネ、大川ぶくぶ、今日マチ子、黒田硫黄、コンノトヒロ、櫻井エネルギー(著)ほか 【日刊マンガガイド】

2018/01/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『メゾン・ド・ねこ』



『メゾン・ド・ねこ』
有永イネ、大川ぶくぶ、今日マチ子、黒田硫黄、コンノトヒロ、櫻井エネルギー(著)ほか
講談社 ¥750+税
(2017年11月22日発売)


2017年秋。
「猫」をお題にして、1冊の本を集合住宅に見立てたアンソロジー『メゾン・ド・ねこ』が講談社より発売された。

まず目をひくのは執筆陣のバラエティだ。
『ポプテピピック』の大川ぶくぶ、『センネン画報』の今日マチ子、『みつどもえ』の桜井のりお、“「COMIC快楽天」の傾奇者”こと櫻井エネルギー……。
「この漫画家さんとあの漫画家さんが同じ本のなかで肩を並べるなんてめったにないよな~」と感じ入る顔ぶれが総勢22人、様々な猫マンガ&イラストを寄稿して最初から最後まで飽きさせない。

どの作品がツボにハマるかは読者それぞれだが、ひとまずここでは私の主観でビビっときた作品5編を以下にピックアップしておこう。

・猫アレルギーだが猫が大好きな女子大生と、そんな彼女に惹かれる男子学生の会話から片思いの自傷性を浮かびあがらせる「きれいな腕」(有永イネ)。
・町中をうろつく野良猫たちはいったいどこからあらわれるのか、という日常的な疑問に異次元宇宙のイメージを接続した「やつらの足音のバラード」(黒田硫黄)。
・ヤクザが拳銃のかわりに、人を萌え死にさせるほどかわいい猫ちゃんを見せあって仁義なき戦いを繰り広げる「極道の猫たち」(左藤真通&市丸いろは)。
・熊本震災の被害を受けた当時の様子を通して、著者が「唯一の友達」と呼ぶ飼い猫のかけがえなさをつづった「猫のしぃさん 震災編!」(高浜寛)。
・猫がYoutuberになってペット用玩具や缶詰を毒舌レビューしていく「ネコチューバー」(竹内佐千子)。

いやー、ほんとに多種多様。
恋愛、SF、シュールギャグ、エッセイ、ホラー、ファンタジー等ありとあらゆる方向性が揃っており、猫をかわいがる人間の視点・人間との関わりに物思う猫の視点・両方をフラットに俯瞰する世界観までバランスよく楽しめる。
猫という題材の持つポテンシャルだけでなく、マンガという表現メディア自体の幅広さもよく感じさせる1冊といえるだろう。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム35年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論 増補改訂版』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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