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『漫画家さん いらっしゃい! R’s Bar ~漫画家の集まる店~』 黒澤R 【日刊マンガガイド】

2014/10/14


MANGAKASANirasshai_s

『漫画家さん いらっしゃい! R's Bar ~漫画家の集まる店~』
黒澤R 白泉社 838+税
(2014年9月29日発売)


自分が好きなあのマンガを、どんな人が描いているのか。その作品は、どんな風に描かれているのか……。多くのマンガ好きがいだく好奇心のひとつである。
そんな疑問に答えてくれるのが、『罪とか罰とか ~一日署長の事件簿』(原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)や『ふたごと!』で知られる、黒澤Rのエッセイ作品である本作だ。
黒澤Rがママ、編集者がバーテンを務めるという設定のバーを舞台に、漫画家たちを「お客様」として招待して、人となり、そして各作品の創作秘話に迫る。

そのお客様たちは、豪華のひと言。
作者がアシスタントも務める羽海野チカや、師匠に当たるえりちんに始まって、森繁拓真、押見修造、花沢健吾、こざき亜衣、古谷兎丸、浅野いにお、すえのぶけいこ、若杉公徳、藤原さとし、宮下裕樹らが、酒の肴にマンガ話を引っ提げて登場している。しかも(設定上とはいえ)、バーで酒も入ったとなったら!?

漫画家だからこそ切り込めるマンガの裏話が満載というのが、本作のおもしろさ。
読んでいるこちらも、羽海野チカの効果演出(多様するトーンやその使い方)の話でまずビールを空け、押見修造の歴代女性キャラのモデルの話で焼酎に切り替えて、花沢健吾が『アイアムアヒーロー』において英雄の彼女・てっこを殺した理由を告白するにいたってへべれけ状態に!
どの漫画家も、キャラクターとしておもしろく描かれているが、そこに逃げ切らず、ちゃんと話を引き出してくれているのが、なにより楽しいしうれしいところ。
筆者が個人的に驚かされたのは、『ライジングサン』の藤原さとし。元自衛官ということは知っていたのだけれど、うーむ、そういう出自で、なおかつそういうきっかけで本作が連載に至っていたとは! 詳細はぜひ、単行本でおたしかめを!!

観察眼の鋭さに加えて、話を聞き出す上手さ。黒澤R、漫画家としてだけでなくインタビュアー、いや、バーのママとしての力量も、かなりのもの!?



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。

単行本情報

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