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『島津戦記』第2巻 岡村賢二 【日刊マンガガイド】

2015/01/28


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『島津戦記』第2巻
岡村賢二 リイド社 \571+税
(2014年12月26日発売)


戦国時代に島津貴久の子として生まれた島津義久、義弘、歳久、家久の4人。
うち義弘を中心にした作品が多いなか、本作は彼ら「四兄弟」を主役としたものだ。

大局的な視野を持つ長兄・義久や内政に明るい歳久、戦場で鬼のように強い義弘や家久、4人とも反則級に優秀だった。
「チート四兄弟」(戦国を舞台としたゲームでも異常に能力値が高い)の異名を取る彼らだが、大友氏や龍造寺氏といった厄介な敵を蹴散らして九州制覇まであと一歩に迫った史実の実績は、それを裏づける。

が、その快進撃も「戸次川の戦い」(本作の第5話)まで。秀吉の圧倒的な武力に屈して軍門に下り、豊臣家の臣下として生き残りを賭けた戦いが始まる。 

話が辛気臭くなりそうだが、本当におもしろいのはここから。
子が親を追放し、兄弟同士が殺し合うお家騒動が当たり前だった戦国時代において、島津家の強さは四兄弟が争うことなく家を支えたこと。秀吉に反乱の濡れ衣を着せられた歳久が、身内同士で争わされるワナにかからず、自害してほかの兄弟を守ったように。

作者の画力は、もっぱら「家を守るために人柱になるカッコよさ」に注がれている。
四兄弟の武の象徴でもあった家久が豊臣軍と単独講話したあとに急死した件は謎に包まれているが、「講和したと油断させて秀吉の首を取ろうとしたが、重傷で死亡」という独自の解釈は、家久のキャラにもピッタリだ。

そんな家久優遇のワリを食ったかもしれないのが、息子の豊久。関ヶ原の戦いで西軍に味方して敗者となった島津義弘が、家康の前を突っ切って撤退する「島津の退き口」をやったとき、命がけで逃した人物だ。
平野耕太『ドリフターズ』でおなじみの「妖怪首おいてけ」である。

いよいよ見せ場の捨て奸(がまり)。小部隊がその場にとどまり敵軍を足止めする捨て身の戦法だが、それを率いる豊久がすぐに槍で串刺しされて絶命。早いよ!
義弘たちが落ち武者狩りや村上水軍と戦いながら落ち延びた、千数百キロの逃避行の方がじっくり描かれていたのが、岡村先生の作家性かもしれません。



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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