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『ちびママちゃん〈完全版〉』第1巻 吾妻ひでお 【日刊マンガガイド】

2015/05/13


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『ちびママちゃん』第1巻
吾妻ひでお 講談社 \1,850+税
(2015年4月24日発売)


吾妻ひでおが1975年から1977年にかけて「月刊少年チャンピオン」(秋田書店)で発表していた『ちびママちゃん』の完全版第1巻が発売された。
オリジナル単行本は長らく絶版状態にあり、そこには収録されていない雑誌掲載のみの章も多いため、ファンの間では復刻が切望されていた作品だけに、今回の「完全版」はまさに待ってました!といった感じ。

内容は一言でいうなら「一家の母親がわりになった女子中学生がダメダメ兄弟に振り回されるハレンチコメディ」で、「ぼくもこんな妹がいたら毎日いじめてあげるのにウヒヒヒという純粋な美しい気持ちで描きました」という著者の言葉どおり、SF抜きの疾走感あふれるギャグをベースに、青少年のピュアな嗜虐心を刺激するロリ&エロが炸裂。

兄がヒモのごとく妹に仕事を斡旋、彼女がエッチな客にいじめられながらもがんばってかせいだお金を、ギャンブルや豪遊で一瞬にして使い果たす――というのが定番パターンなのだが、兄がバカでクズで、ちびママちゃんが虐げられればられるほど、その健気なかわいさが際立つのだから「かわいそう」は、なるほど男の(女も?)重要な「萌えポイント」なのだなーと目からウロコ。

時代的には、著者がマニアックなSF・ロリコン・ナンセンス路線で時代の寵児となる前時期の作品で、掲載誌もメジャー少年誌ゆえ、ナンセンスな過激さはひかえめ。
永井豪の美少女モノにも通じるキャッチーさもあるが、母親の遺骨を「おいし まだ肉ついてた」としゃぶったり、「みんなで首つり楽ちいなー」となったり、著者ならではのブラックさも随所に確認できて楽しい。

6月には第2巻が発売予定。往年のファンはもちろん、『失踪日記』以降の読者も要チェックだ。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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