『チョッキン 完全版』第1巻
吾妻ひでお 復刊ドットコム \1,850+税
(2014年10月30日発売)
あの幻のドケチギャグ『チョッキン』が、単行本未収録作品を含めた完全版で刊行!
近年は『失踪日記』などセンセーショナルなエッセイマンガで注目を集めた吾妻ひでおは、ロリコンの祖としての評価も高く『ふたりと5人』や『やけくそ天使』をはじめとする美少女ギャグマンガが代表作にあげられる。
そこからすると70年代後半、「週刊少年チャンピオン」に連載された本作はやや異色? お金を貯めること、節約すること、預金通帳をながめることが何より好きな少年・チョッキンを主人公としたドタバタギャグだ。
もちろんしっかり同級生のカワイコちゃんヒロインも出てくるのだが、デートの時でさえチョッキンはまるでブレない! 映画館デートは看板を見るだけ、喉が渇いたら空き缶に川の水をくんで粉末ジュースを入れるとか……!?
しかし、じつはチョッキンは大金持ちの子息である。父はいくつもの会社の社長なのだが、この両親はさらに輪をかけたドケチ。巨額の資産を持ちながらほったて小屋に住み、ムダなエネルギーを消費しないようにツギハギ布団をかぶってじっとしているのが常。小金を稼ぐチャンスは逃さず、たとえ親子の間柄でも貸し借りには超シビア。
両親に比べると、チョッキンは多感な少年らしくドケチに徹しきれないところがあるのもいい。
野良犬に情がわいてしまったり、たまにはおいしいものを食べたいなぁと願ったり、なんとも愛すべきキャラクターだ。
回を重ねるごとにどんどん暴走するギャグ、テンポのよさにひきこまれる快作。
完全版は全3巻が発売予定とのことで、続刊が楽しみである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」