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『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』第4巻 モーリス・ルブラン(作) 森田崇(画) 【日刊マンガガイド】

2015/05/31


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『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』第4巻
モーリス・ルブラン(作) 森田崇(画) 小学館クリエイティブ \600+税
(2015年5月2日発売)


出来のよい映像化作品は、それに接した者をして、原作にあたってみたいと思わせてくれる。
最近、堤幸彦監督の映画『イニシエーション・ラブ』を観たのだが、鑑賞中にところどころで感じる小さな違和感が、「こういうことだったんだ!」と払拭されるラストは爽快で、原作である乾くるみの同題小説を読んでみたくなったしだいであった。

『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』は、フランスの作家・モーリス・ルブランが創造したキャラクター、アルセーヌ・ルパンシリーズのコミカライズ作品なのだが、こちらも「ルパンファンの第一人者を任ずる」森田崇が手がけているだけあって、原作に手を伸ばしてみたくなる出来栄えなのである。

アルセーヌ・ルパンといえば、ミステリというジャンルにおいては、シャーロック・ホームズと比肩されるほど有名なキャラクターだ(今となっては「ルパン三世」のおじいちゃん、と言ったほうがわかりやすいか)。
ただし、その「完訳作品」を通読した人は少ないようだ。
それにはルパンシリーズの分量も影響していることと思う。シャーロック・ホームズの「正典」は長編4作、短編56作。短編が主体であり、比較的とっつきやすい(短編は5冊の短編集となり、合計で9冊となる)。筆者もホームズシリーズはすべて通読した。

一方、ルパンの物語は、本作の著者・森田崇の整理によると翻訳された本の分量で25冊に及び、しかも長編が主体だ。
筆者も、それゆえに敬遠していたクチなのだが、この機会に挑戦することにした。

さて、前置きが長くなってしまったが、第4巻は前巻からの続きで、ルパンシリーズの代表作『奇巌城』が原作となっている。
ジェーブル伯爵邸に盗賊たちが侵入する事件が発生。伯爵の姪・レイモンド嬢は、賊の首領を猟銃で撃ったが、負傷で動けないはずの怪人物は、そのまま姿をくらましてしまう。
盗みの被害はないように思われたのだが、じつは4枚のルーベンスがニセモノとすり替えられていた。大人たちを尻目に、その事実を指摘したのは少年イジドール・ボートルレであった。

ルパンのライバルといえば、パリ警視庁のガニマール警部、あるいは英国の私立探偵・ハーロック・ショームズ(ホームズをモデルにしたキャラ)がおなじみだが、今回の相手は高校3年生の少年である。
バカロレア(大学受験)があるので、事件にばかり関わっていられない、といいながら、ルパンの考えを読みきって、その計画を水泡に帰させてしまうのだから小憎らしい(高校生探偵の金田一一や工藤新一たちのさきがけともいえる)。

第4巻ではボートルレの推理によって「奇巌城」を巡る壮大な秘密が明かされたかと思われたのだが……この続きは2016年初頭に刊行予定の第5巻で、ということになる。

そして、『奇巌城』が完結しても、ルパンの物語はまだまだ続く。
『奇巌城』は原作でいうとシリーズ4冊目にあたる作品で、後には代表作『813』や異色作『八点鐘』が控えている。

長大なアルセーヌ・ルパン・サーガを、森田崇が最後まで描ききれるように応援していきたいところだ。

ちなみに、ルパンシリーズのマンガ化は、さいとうちほも手がけている。雑誌「増刊flowers」に発表されている『VSルパン』で、5月現在でコミックスの第1巻が刊行されている。森田がルパンの物語を第1作から順番に描いているのに対して、さいとうはお気に入りのエピソードをマンガ化する傑作選形式でルブランの原作に挑んでいる。
作品の好みやルパンやガニマール警部といった登場人物の描き方に、森田との違いがあるので、読み比べることも非常に興味深いと思う。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。『本格ミステリベスト10』(原書房)にてミステリコミックの年間レビューを担当。最近では「名探偵コナンMOOK 探偵少女」(小学館)にコラムを執筆。

単行本情報

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