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『鮫島、最後の十五日』第2巻 佐藤タカヒロ 【日刊マンガガイド】

2015/06/05


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『鮫島、最後の十五日』第2巻
佐藤タカヒロ 秋田書店 \429+税
(2015年5月8日発売)


スポーツを見ていて涙する──そんな経験はないだろうか。
ひいきの選手やチームの勝敗が絡んだ試合はいうまでもないが、プレーヤーが背負った物語に、またはプレーが描きだすドラマに涙する。
もう理屈は抜きで、その場にあふれる熱気と緊張、選手が醸す集中と気迫だけで、観る人を涙させることだってあると思う。いや、たしかにあるのだ。

佐藤タカヒロの相撲マンガ『バチバチ』シリーズはまさにそんな作品だ。
角界を追われた亡き大関の父に打ち勝ちたいと、相撲の道へ飛びこんだ鮫島鯉太郎。
負けず嫌いで無鉄砲、押し相撲の張り手を得意とする彼が、初作『バチバチ』で相撲部屋入り、番付も品格も上げながら、次作『バチバチBURST』では兄弟子となった姿が描かれている。

そして、最新作『鮫島、最後の十五日』。
作中では5年の時がたち人気力士となった鮫島が主役の作品にしては、タイトルから悲壮で哀切漂う。じつは彼も、同期の力士たちも、過酷な取り組みをくり返すことで、肉体はボロボロになっている。
また実際、鮫島には、いわゆるパンチドランカーの兆候も見え始めていて、このまま相撲を続ければ脳障害から死に至りかねない。
それでも鮫島は、これまでどおり土俵に向かう。自分がすでに相撲の神様に愛されておらず、見放されていることも自覚している。だからこそ鮫島は……。

一見ヤンキーマンガというイメージで始まった『バチバチ』は、青春マンガとしての境地にたどり着いた。ただ、ヤンキーマンガというものもまたある種の青春マンガでもある。
若者を描いているからではなく、終わってしまう時代を描いているから、青春マンガ。
少年は男になり青春は終わって、男となって引き際を知る。勢いだけでも、また手堅さだけでも人は生きられない。闘う者の孤高。そのなかで鮫島はすでに青春も終え、引き際と向き合っているわけだ。

闘い、友情、ライバルといった男性マンガならではのおもしろさを熱く見せながら、相撲の神聖さや荘厳さもきちんとすくいあげて見せた『バチバチ』シリーズ。
『鮫島、最後の15日間』もまた種類は違うが、熱い作品であることは間違いない。
青白い炎の静かで深い熱さ。最新刊2巻では、場所2日目の相手である宝玉光との取り組みを前に、彼との回想が描かれる。
宝球光にしても、鮫島にしても、そこまでしてなぜ戦わなければいけないのか。それだけでも涙せずにはいられない。闘う男の人生を見届けようとする、そんなマンガだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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