どんな年齢になっても、やはり血沸き肉躍る「熱い漢たち」を描く少年マンガが、自分の原典……! というマンガ好きのオトナ、多いのではないでしょうか。
自分の生き方や仕事観、後進への指導など、悩みも多い働く現代人。そんな時に少年マンガを読み返せば、まっすぐなキャラクターの言葉や生き様が、ハートを熱くたぎらせてくれるものです。
今回は、そんな「熱い漢」を描いた少年マンガのオススメ3作品を、熱血作品が乱れ咲いた80年代の少年カルチャーに詳しい、ライターの有田俊さんにうかがいました。
[※2013年から2014年10月に発売されたマンガ単行本のなかから選出をお願いしています。]
有田俊さんイチオシの3作品!
『男坂』車田正美
『男坂』4巻
車田正美 集英社 ¥400+税
(2014年10月3日発売)
マンガ史に燦然と輝く打切りエンドで幕を下ろした伝説の作品が30年ぶりに復活!
『リングにかけろ』『風魔の小次郎』『聖闘士星矢』と、歴史的ヒット作を生み出す一方、意外と打切り作品も多い車田正美作品のなかでも、とりわけ「未完!」という強烈な見開きで終わった本作。その続編ということで、マサミストの僕としてはプッシュせざるをえません。
驚きなのは、「打ち切りがなければ描くつもりだった」というストーリーが展開することで、劇中は連載当時の80年代半ばのまま。携帯もなければ、人気アイドルといえばキョンキョンという具合で、「これ本当に2014年のマンガなのか?」と妙な気分にさせられます。
しかしながら、作品そのものは30年のブランクを感じさせないテンションの高さを、ばっちり維持できているのは素直に感動です。「そうそう、これが読みたかったんだよ!」と、80年代の「週刊少年ジャンプ」に親しんでいた読者なら、思わず頬がほころんでしまうはず。
日本の覇権をかけて戦う世界中の「硬派」たちの戦争、という荒唐無稽すぎる物語が、どんな結末を迎えるのか。今度こそ最後まで男坂を登りつめる様を描ききってもらいたいです!
『ギガントマキア』三浦建太郎
『ギガントマキア』
三浦建太郎 白泉社 ¥600+税
(2014年7月29日発売)
バディものと呼ばれるジャンルにおいて、ムサい男と美少女の組み合わせというのはある種の定番。
そんな人気ジャンルに、『ベルセルク』の三浦健太郎が連載を休止して挑戦した短期集中連載作品が本作。
三浦作品の魅力というと、芸術の域にまで到達した細かい描き込みと、深い人間ドラマ。そして限界知らずの暴力描写が挙げられますが、そこにもうひとつ、「キャラ萌え属性」を挙げたいと思います。
『ベルセルク』でもパックやら幼き魔女シールケなど、近年は「ちっこくて、かわいいキャラ」がエクストリームな男たちの戦いに、彩りを添える機会が増えています。本作は、そんな「マッチョマンと萌え萌え幼女の素敵なコラボレーション」要素を突き詰めた実験作とも言えます。
なかでも、主人公・デロスの傷を癒すのが、ヒロイン・プロメが排泄する体液・ネクタルという設定は、かなりキてます(よーするにオシ○コをガブガブしちゃうわけです)。
とはいえ、しっかり読ませるジェットコースターのようなドラマや、毎回読者を驚かせるギミックを仕込むあたり、マンガ職人・三浦健太郎の匠の技がキラリと光ります。
まるで良質の長編アクション映画を見るかのように、気軽に楽しめる娯楽大作です。
『バチバチ BURST』佐藤タカヒロ
『バチバチ BURST』12巻
佐藤タカヒロ 秋田書店 ¥419+税
(2014年10月8日発売)
今、一番熱いアクション系スポーツマンガといえば、『バチバチ』以外にない! 異論は認めない! とにかく一度読め! 以上!
とか言いきりたいくらい激アツなマンガです。
本作は「週刊少年チャンピオン」連載の相撲マンガ。
かつて角界一の暴れん坊と言われながらも、暴行事件を起こして廃業。そんな不名誉のなかで逝去した大関・火竜の息子・鮫島鯉太郎が繰り広げる、血まみれ、汗まみれ、泥まみれの相撲ライフを描いた作品です。
本作の魅力は、鯉太郎のみならず取組相手のライバル力士、先輩力士など様々なキャラクターのバックボーンをこれでもかと丁寧に掘り下げるところ。さらに、土俵外の確執や葛藤もじっくり、たっぷり描写。毎回、しっかりとお膳立てをしてから取組に入るわけでして、そのノリはまるでプロレスのよう。あえて言うなら「プロレス系相撲マンガ」と言いましょうか。
それでいて、しっかりと相撲業界のウンチクを盛り込む点も見逃せません。劇中で終始描かれる「日々の基礎練習の積み重ねが勝利への近道」というスポーツものに定番のメッセージも、地に足の着いた描写ゆえに強烈な説得力を持って読者の胸に迫ります。
漢達の熱い生き様と肉体が激突する本作は、今一番おもしろいマンガだと言っても過言ではありません!
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