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『うなぎ鬼』第3巻 高田侑(作)落合裕介(画)【日刊マンガガイド】

2015/07/15


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『うなぎ鬼』第3巻
高田侑(作)落合裕介(画) 少年画報社 \590+税
(2015年6月22日発売)


本作『うなぎ鬼』は、角川ホラー文庫所蔵の高田侑による同名小説のコミカライズだ。
原作者は、『裂けた瞳』で第4回ホラーサスペンス大賞を受賞した高田侑。本作、『うなぎ鬼』もまたホラーということになるが、その肌触りはミステリーやサスペンス、バイオレンスに近い。
そのうえでたくましく、もの悲しくて、決定的に怖い。

ギャンブルによって借金が膨らんでしまった、倉見勝(くらみ・まさる)。強面の風貌を持ちながら、じつは気弱な彼は、裏稼業風の男にそのある才能を見出され、千脇エンタープライズという会社に身請けされることになる。
やるべき仕事は、借金の取り立てと、そのかたわらで風俗嬢の送迎。そんななか、倉見を千脇エンタープライズへと引き込んだ千脇公一(ちわき・こういち)から、黒牟(くろむ)というさびれた街の鰻養殖場・マルヨシ水産に、あるモノを運ぶように命じられる。
重さは約60kg。しかし中身に関しては、いっさい知らされず、知ってもいけないと言い渡される。そのマルヨシ水産、そして送り迎えをする風俗嬢たちと関わるなかで、倉見の心は次第に壊れ始めていく……。

いったい、本作の何がそんなに怖いのか。不気味で生臭い、黒牟という街の描写は大きなポイントだ。
そしてそこに蠢く人々。彼らはやたらに暴力をふるうわけでも、暴言を吐くわけでもない。むしろ表街道を歩く人たち以上に、冷静で律義で、社会のルールを順守しているかのようにみえるが、それがかえって不気味さを際立たせる。
そうした闇のある場所、闇を生きる人たちの怖さを、作画の落合裕介は見事に絵に落としこんでいる。すべてを描ききるわけじゃない。ニュアンスを的確に、より視覚的に二次元化させているのだ。

本巻で完結の『うなぎ鬼』。ネタバレを避けるため、そのラストについて多くは語らないが、姿は鬼のようであっても、臆病ものだった倉見が、ついに心まで鬼と化してしまう。そして皮肉にも、鬼と化したことでこれまで倉見自身が鬼と思っていた人々の優しさと孤独と矜持に気づくことになる。
いっぽうで、倉見は新しい鬼を生み出してしまうことにもなる。その怖さには、生暖かい空気にまとわりつかれたような気味の悪い持続性がある。

本作はタイトルも秀逸。鰻のあのぬめっとした感じと、鬼という言葉が持つ力強さ、その2つが合わさって生み出される得体の知れない怖さが、マンガ版でも味わえる。
『闇金ウシジマくん』『東京闇虫』にある種の心地よさを感じているかたには、死ぬほどおススメな一作だが、それらの作品が持つ、ある種の突き抜けた爽快感は『うなぎ鬼』にはない。ただひたすらに人の怖さと悲しみがあるのみだ。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。

単行本情報

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