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『きのう何食べた?』第10巻 よしながふみ 【日刊マンガガイド】

2015/07/23


KinouNaniTabeta_s10

『きのう何食べた?』第10巻
よしながふみ 講談社 \581+税
(2015年6月23日発売)


弁護士のシロさんと美容師のケンジの同棲ゲイカップルの日常を描いた本作も、いよいよ10巻に突入。

本巻では大きな事件こそ起きないが、シロさんが高齢の両親を心配して頻繁に実家に帰るようになったり、腹肉と頭頂部が気になり出したケンジが思い切ってショート金髪にイメチェンしたり、「加齢」というテーマがナニゲに描かれている。
たしかに、シロさんもケンジも若く見えるけど、もうアラフィフなわけで、こういう問題もリアルになってくるわな~と思いつつ、恋愛とか同棲生活のこういった部分を描いた作品って、ゲイ/ノンケにかかわらず、じつは意外となかったわけで。

とくに日本では、まだまだ「年をとること」がネガティヴにとらえられがちだが(美魔女ブームもしょせん、加齢から目をそらした若さへの執着でしかない)、長い同棲生活のなかで、ときには子どもじみたケンカをしながらも、相手を尊重し、理解しようと努め、いたわりや感謝の言葉をちゃんと伝えあいながら暮らす2人の姿には、こんなふうに年を重ねていけたら……と、考えさせられずにいられない!(特にケンジの健気な愛らしさよ……!)

小日向さんとジルベールのゲイカップル仲間、シロさんの同僚の志乃さん、主婦(笑)仲間の佳代子さんなど、2人を取り巻く人々もまた、年を重ね、微妙な生活の変化を迎えながらも、その人らしく人生を謳歌していて、思わずホッコリ。
本作は「ゲイカップルの恋愛」を描いたというよりは、様々な人間関係の機敏、「相互理解と成長」を描いた物語なのだなーと、あらためて感心したり。

もちろん、垂涎の自炊メニューも、今回はコロッケパン、豚バラとキャベツにら春雨のモツ鍋風、おうち焼肉、コッタチーズのパンケーキ(乙女=ケンジの執着炸裂!)……と大充実。
ヘタなレシピ本より、よっぽど使えて、家内円満に役立つこと間違いナシ!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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