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『クライシス・オン・インフィニット・アース』 マーブ・ウルフマン(作) ジョージ・ペレス(画) 石川裕人/御代しおり/松澤慶香(訳) 【日刊マンガガイド】

2015/07/28


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『クライシス・オン・インフィニット・アース』
マーブ・ウルフマン(作) ジョージ・ペレス(画)
石川裕人/御代しおり/松澤慶香(訳)
ヴィレッジブックス \5,980+税
(2015年4月30日発売)


本作は国内アメコミファンダムの間で長らく待望されていた、80年代のDCコミックスにおける、膨大な世界設定を総括・整理するために展開された大作シリーズの邦訳である。

802人にも及ぶ登場キャラクター、90ページに及ぶ解説ページと、まさに邦訳コミックという出版形態としてはひとつの頂点に達したといってもいい完成度で、長年待った甲斐があった本といえる。
本国での出版以来30年近く、邦訳を悲願としてきたという製作陣には、まさに頭が下がる思いだ。すでにDCコミックスの世界に足を踏み入れている人には、非常に資料的価値は高い。

内容も、DCユニバースのすべてが関わる物語だけあって、アート・色・ドラマが洪水のように展開される。
多次元宇宙を滅ぼそうとする究極の危機(クライシス)に対して、無数のヒーローたちがもがき、立ち上がり、犠牲を払い、そして新しい時代の誕生に立ち会う……美しい人体で画面をいっぱいに埋めるジョージ・ペレズのアートも相まって、ルネサンス期の宗教画の様に感じられる場面すらある。

いっぽう、アメコミ慣れしていない読者は、こうした圧倒的物量に気圧されて、本作の伝えようとしている意義、そしてその果たした役割を見失ってしまうかもしれない。
そこで注目してほしいのが、ユニバース制と長い歴史を持つヒーローコミックスの世界は、(DCであれマーブルであれ)ときどき大きな変化を必要とするということだ。

「アメコミってしょっちゅうリセットが起きるんでしょ?」というイメージはつきまといがちだが(よく読めばわかるが、そもそもリセットではないのでは? という話はさておき)、実際に数年にわたって毎月読む身になると、ヒーローコミックというものは「終わりのない日常」を数カ月あるいは年単位で送ると、すぐにダレていくものだ。
時代に合わせた変化がないと、たちまちつまらないものや身近に感じられないものになっていく。

また新規の読者の興味を引くためのとっかかりも必要だ。そのニーズに合わせるために、現在進行形で変化していく世界のダイナミズムが、アメコミのユニバースの醍醐味のひとつでもある。
そうした変化をもたらすことができて、お祭りとして盛り上げ、しかも商業的に成功することもできるという、ヒーローコミックの重要な特徴を決定づけたのが本作である。

「ヒーローもののアメコミ」という文化を定義づけた定番作品のひとつとしても、ぜひ注目してもらいたい。



<文・Captain Y>
アメコミオタク。クリエイター・オリジナル作品専門の邦訳アメコミ出版社Sparklight Comicsから翻訳を担当した『デッドリー・クラス』日本語版第1巻が発売中。
ブログ:Codex 40000 建設予定現場
twitter ID:@Captain_Y

単行本情報

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