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『アクアパンク -最初の掟-』第1巻 LO(著) 吉川悠(訳) 【日刊マンガガイド】

2015/11/30


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『アクアパンク -最初の掟-』


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『アクアパンク -最初の掟-』第1巻
LO(著) 吉川悠(訳) Sparklight Comics ¥1,400+税
(2015年11月15日発売)


「アメリカにはマンガ同人誌文化がない」と言われる一方で、しばしば見すごされているのが個人で経営しているような出版社や、WEBコミックの存在である。
WEBコミックの大半が閲覧無料であるが、ファンの多いコミックであれば、グッズの販売や「Kickstarter」のような一回出資型のクラウドファンディング、あるいは「Patreon」のような月額支援型のフォーマットによって、商業基盤やクリエイターの収入がサポートされていることも多い。なかには大手出版社によってまとめられて出版されるタイトルもある。

そうしたWEBコミックをめぐる事情があったうえで、今回紹介する『アクアパンク -最初の掟-』第1巻は海外のファンタジーWEBコミックを国内で出版するという、試みとしてはかなり珍しいものになる。

物語には人間が登場せず、1巻の舞台はすべて水中となる。
不死の秘密を解きあかし、海底文明を築きあげた魚人種族と、その奴隷となって働く石でできた種族によって物語は展開する。
奴隷種族の出身である主人公は、ある奇妙な体験からその境遇に疑問を持つようになる……。

アートを見れば一目瞭然ではあるが、著者のアートはマイク・ミニョーラから強い影響を受けている。
デザイン、陰影の使い方、そして間の取り方などにそれがうかがえる一方で、これも『トランスフォーマー』をはじめとするロボットジャンルの影響も強い。
奴隷であり石の肉体をもつ種族「忠義の民」はその見た目、人類との関係性においてロボットそのものだ。ロボットは、その語源となった作品そのものからして階級のメタファーであったが、今作でもそれは受けつがれており、死から蘇ることのできる特権階級と、一度死ねば蘇ることを許されない下層階級の差に気づいた主人公たちには、著者の社会批評もこめられている。

独特の世界観や言語感覚は少々複雑であるが、主人公を無知な状態から始め、読者とともに世界の秘密を学んでいくという、引きこまれやすい展開になっているところにも注目したい。
トイから始まったトランスフォーマーその他のもたらした文化的な遺伝子が、変容を続けた結果、ここまでオリジナリティにあふれる世界と物語を展開していくという非常に興味深いサンプルであり、一度手にとってもらいたいコミックである。



<文・Captain Y>
アメコミオタク。クリエイター・オリジナル作品専門の邦訳アメコミ出版社Sparklight Comicsから翻訳を担当した『ファタール』『ベルベット』『デッドリー・クラス』『アクアパンク -最初の掟-』が発売中。
ブログ:Codex 40000 建設予定現場
twitter ID:@Captain_Y

単行本情報

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