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【日刊マンガガイド】『青年のための読書クラブ』第3巻 桜庭一樹(作) タカハシマコ(画)

2014/08/02


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『青年のための読書クラブ』第3巻
桜庭一樹(作) タカハシマコ(画) ほるぷ出版 \630+税
(2014年7月15日発売)

1919年設立の、由緒正しき女学校、聖マリアナ学園。ここでは毎年「王子」と呼ばれる、少女たちの憧れの人物が投票で選出される。凛々しさ、かっこよさ、麗しさ、気品……。
そして1969年、学園内のアウトローが集う「読書クラブ」から王子が選出される。きわめて特殊で、攻撃的な手段によって。

閉じた女子校のなかで、恋でもなく友でもない複雑な感情や、憧憬から祭りあげられた、イコン(聖像)となる人物たちを描写した作品だ。
しかし、正統派な「王子」は描かれない。読書クラブは、思想性に富み、学園からはみ出した異端者の集まる場所。ここから時代にあわせて「王子」たちが生まれる。

60年代には不良をつくりあげ、90年代にはジュリ扇ギャルが担ぎあげられた。00年代にはロックバンドが生まれ、アジテーター(扇動者)の役割を担った。
そして3巻では、2019年の学園共学化の前に、たったひとり残った最後の読書クラブ員によって、「幻の王子」が作りあげられる。

タカハシマコは、女性の中にある「少女」をとらえるのが巧みな作家だ。
1969年に初めて王子を生んだ、当時の読書クラブ員は、もうおばあちゃん。だが彼女たちが集まった時、スッと少女へと戻る。このシーンが本当にすばらしい。
原作の桜庭一樹による連作小説集は、抽象化された少女描写も多く、コミカライズがたいへん難しい作品だ。ここから「少女分」を抽出してきっちりとまとめ、マンガだからこそ読むべき価値のある作品として、見事に仕上げている。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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