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『げんしけん 二代目の十二』 第21巻 木尾士目 【日刊マンガガイド】

2016/12/14


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『げんしけん 二代目の十二』


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『げんしけん 二代目の十二』 第21巻
木尾士目 講談社 ¥610+税
(2016年11月22日発売)


ついに『げんしけん 二代目』も今巻で完結。

現代視覚文化研究会のOB、斑目。絵に描いたような90年代スタイルのオタクの彼が、なぜか4人の女子(うちひとり女装男子)に激モテ。
「斑目ハーレム」。まわりからいい加減ひとり選んで彼女にしなさい! と責め立てられて、彼がついに決着をつける。

ラブコメとして非常に楽しい展開だった。
同時に、オタクには厳しい展開でもあった。
というのも、いわゆる「オタクあるある」が最終巻にいくにしたがってどんどん減り、キャラの思考の型が「恋愛」に差し替わっていったからだ。

これは著者が意図的にやっていたことだ。
斑目の叫びが物語っている。
「いつから現視研は……こんなヤリサーみてーになったんだ!?」
「さっきから聞いてりゃ女女女! やるとかやんねーとかそんな話ばっか!! 違うだろ!?」
「今あのマンガが一番おもしれーとか!! 冬アニメ不作スギィ!とか!! 集まって徹夜でひたすらゲームとか!!」

「オタク」というのは、「なってしまう」ものであり、「あり続けよう」とするもの。
そして「卒業してしまうもの」でもあり、「優先順位が変わるもの」でもある。

出てくるキャラはOB含め、みんなまだアニメ・マンガ好き。
ただ彼らが「オタク」どっぷりかというと、そうでもない。
それぞれ彼女がいたり、会社で働いたり。

恋愛からも仕事からも逃げていたオタク・斑目に対しての、カウンターのようだ。なかなか厳しい。
そして彼もまた、この巻で恋愛と仕事から逃げなくなる。
もうモラトリアム生活のなかにはいられない。

「オタクの性」を、ドロドロさせすぎず、でも「大学生ならありうる」話として描いた作品は、とても貴重だ。
初代と二代目の間で、キャラクター中の恋愛・交際・セックスの価値観が違う。というか「二代目」が始まった第10巻から見ても、ものすごく変化している。
特にコミュニケーション問題の渦中から、見守る俯瞰側にシフトしていった荻上の様子を追いながら読み直すのをオススメします。

あと矢島、ぼくは君ががんばる三代目が見たい。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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