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『このマンガがすごい!comics 北条早雲/豪談 後藤又兵衛』 永井豪・ダイナミックプロ 【日刊マンガガイド】

2017/03/14


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『このマンガがすごい!comics 北条早雲/豪談 後藤又兵衛』


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『このマンガがすごい!comics 北条早雲/豪談 後藤又兵衛』
永井豪・ダイナミックプロ 宝島社 ¥590+税
(2017年3月10日発売)


永井豪といえば『ハレンチ学園』のような過激なギャグ作品や、『デビルマン』『マジンガーZ』『キューティーハニー』『バイオレンスジャック』といったSF・ホラーアクションが、まずは代表作として挙げられるだろう。
しかし、そのジャンルと並行して1990年代後半から手がけてきたのが、いわゆる戦国時代劇作品。児雷也や霧隠才蔵といった伝承上の人物を中心とした「豪談」シリーズや、吉川英治の『神州天馬侠』を原作とする『戦群』、そして「戦国武将列伝シリーズ」と銘打たれて展開した作品群など、このジャンルだけでもかなりの数を描いている。

その戦国武将を描くシリーズのなかでも、とりわけ通好みのチョイスと言える入魂の一作が、『北条早雲』だ。
戦国武将としては、晩年になってからの活躍が主に知られる早雲だが、本作はまだ伊勢新九郎を名乗る若き日の活躍から描いているのが、最大のポイント。
基本的には史実とされるできごとをベースとしつつ、そこに鷹を相棒にした早雲の忍術めいた特殊技能に代表される、エンタメ要素をミックスするバランスが絶妙。

また、駿河での調停におけるエピソードとして有名な太田道灌との和議なども非常にドラマチックにアレンジされており、歴史に詳しい読者はもちろんのこと、そうでない人が読んでも興味ひかれる物語として仕上がっている。

そして早雲としてなじみの深い僧形となってからは、合戦やキャラクター描写に永井豪らしさが炸裂! 特に足利茶々丸や三浦義意(みうら・よしおき)たち敵将のまがまがしい姿に、その傾向が顕著といえるだろう。

なお、このたび「このマンガがすごい!comics」のシリーズとして再編集された単行本は、『北条早雲』だけでなく、『豪談 後藤又兵衛』もカップリング。
ダイナミックな活劇の要素が強い「豪談」シリーズの醍醐味もたっぷりと味わうことができ、永井豪の戦国時代劇作品の入門編としてもおすすめの1冊だ。



<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。

単行本情報

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