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【インタビュー】押見修造『血の轍』 圧倒的画力で描かれる、”衝撃のヤバい母親”マンガ。そのなかには実体験も……!? 

2018/04/26


親による過干渉と親子関係に対するわだかまり

――『血の轍』は14歳の主人公・静一と、その母・静子の物語です。先ほどおっしゃった「未解決な部分」とは、母親との関係ということでしょうか?

押見 まぁ、そうなんですけどねぇ……。まだ物語が終わっていないので、どこまでいっていいものやら……。

――中学生時代に初めてつきあった女の子がいたけど、お母様に別れさせられた実体験があると、以前おっしゃっていましたね。

押見 そのへんのことも含めて、物語形式ではなく、自伝的というか、ノンフィクションの形式で描こうとも思いました。そのほうが自分の抱えている問題を表現できるのかな、と。ただ、そのやり方だと、切り捨てられちゃうところもあるんです。実際にあった出来事を客観的に形にしても、本質がうまく伝わらないところがあるんですよね。

――自伝ではなく、あくまでフィクションで。

押見 これは僕の性分なのかもしれないんですが、真実が逃げていっちゃう感じがしているんです。うまく描ける作家さんもいっぱいいるんですけど、僕は本当のことだけを描くと嘘臭くなってしまう。一個フィクションをかませたほうが、本当らしく描ける気がしてます。だから、自分の身に実際に起きた出来事をそのまま描いたり話したりするのは、やぶさかではないんですけど、マンガがまだ終わっていない段階では、あんまりいい過ぎるとマンガで伝えたいことが、うまく伝わらなくなるんじゃないかな、と。

――これだけ自分のなかにあるものをテーマにする作家さんも珍しいですね。

押見 かもしれないですね。まぁ、そんなことをいっておきながら、将来的にノンフィクション作家になっているかもしれないですけど。

――親子関係は「表面上は円満」とのことでしたが。

押見 表面上は平穏ですよ。作品で描くような事件があったわけではありません(笑)。だから、あくまで自分の内面的な問題なんです。いまだに親に対して気を使っている部分があるような感じ、自分の素直な感情を親にだせたことがない感じがあるんですよねぇ。この歳になって、子どももいるのに、なんでそれが治ってないんだろう?

なんてことのない会話にさえも、静一の14歳とは思えないほどの気づかいが充満している。

――それが一番の動機ですか?

押見 なんとかそれに向きあいたいな、と。

――実際にご自分が親になってみて、親の過干渉について、どうお考えですか?

押見 子どもの頃に怒っていたこと、恨みに思っていたことに対して、別の見方ができるようになりました。むこうもむこうなりの事情がある……というか、「せっぱ詰まっていたんだな」と思うところはあるんです。ただ、それと「許せる/許せない」は別問題というか……(笑)。許せるようになりたいんですけどね、いまだに許せていない自分がいます。

――具体的な事例はさておき、親とのわだかまりというのは、だれしもあると思います。

押見 そうですね。大なり小なり、あると思います。

――ほかの方に親子関係について聞いたりします?

押見 この『血の轍』を読んで「ウチの場合はこうです」とは、ちらほらと話してくれる人は増えましたね。いわゆる“毒親”的な、もっと明確に攻撃的な親とかの話も聞きました。

――“毒親(子どもを自分の支配下に置き、有害な影響を与える親)”は、現代を読み解くうえでのキーワードともいえます。

毎日幼稚園の教室のうしろで静一を見守っていたという静子。この時と今の静子と静一の関係性は変わらないままなのだ。

押見 自分のまわりを見ていても多いですね。自分が子どものまま大人になる、っていう人ばかりだと思います。この作品を描いていると、自分ではフタをできていたと思っていたものが、どんどん噴きだしてきて、体調が悪くなったりします。

――押見先生はご自分の問題と作品のテーマが直結していますから。

押見 それでも、今まで体調が悪くなるようなことはなかったんですけど、今回はかなりありますねぇ。僕は吃音なんですけど、今作を描いてる最中には吃音がひどくなったりしてます。『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では吃音を題材にしましたけど、本作の主人公の静一も、どもったりするんですよ。

"あの事件"以降、うまく言葉がでなくなった静一。自覚なく、何かが彼を蝕んでいく。

――先ほど押見先生が「子どものまま大人になる」とおっしゃいましたが、それがひとつのキーポイントかもしれないですね。

押見 ただ、「息子と母親」の関係性を描いたもので、自分の心を代弁してくれるような作品に出会ったことがないんです。逃げ場がないので、やむにやまれずというか、これは自分で描くしかないな、と。

第1集、第2集ともに巻末に収録されている、「PhotoAlbum」。先生の"今"に通ずる、今後の展開とは……?

――反抗期にグレたり、親に歯向かったりできない子のほうが多いですよね。静一もそのタイプではないでしょうか?

押見 そうですね。相手(=親)が子どものままだったりすると、反抗しようにもできない。何に対して反抗すればいいのかわからない。それゆえのつらさというのもあると思います。

■次回予告

次回のインタビューでは、さらに押見先生の内面に迫る! そして、今後の展開まで!?
インタビュー第2弾は5月3日(木・祝)公開予定です! お楽しみに!

そしてそして!
『血の轍』第3集が明日4月27日に発売です!!

『血の轍』 第3集
押見修造 小学館 ¥552+税
(2018年4月27日発売)


さらに母・静子にのみこまれてゆく静一に、とある変化が――。
第3集も、目が離せません!!

取材・構成:加山竜司

単行本情報

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