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大谷紀子『すくってごらん』インタビュー【前編】 世界一静かで優雅なスポーツ「金魚すくい」――まさかのマンガ化!

2015/02/16


大手メガバンクの東京本社から奈良県の大和郡山支店に転勤してきた元エリート銀行マン・香芝誠は、新天地で「金魚すくい」と出会う。はじめは興味を示さなかった香芝だが、その土地の人々と触れあうことで、序々に金魚すくいの魅力に目覚めていく……。『このマンガがすごい! 2015』オンナ編で14位にランクイン。「日本初の金魚すくいマンガ」の誕生秘話に迫る!

大谷紀子

女性漫画家。

著作に『Fine』(集英社)、『浦島龍宮絵巻』(集英社)、『メランコリック』(集英社)など。「BE・LOVE」(講談社)にて連載していた『すくってごらん』が2015年2号で最終回を迎えた。

『すくってごらん』最新3巻は絶賛発売中!

Twitter: https://twitter.com/noriko_ohtani

 

日本初の「金魚すくいマンガ」

ーー『すくってごらん』は、金魚すくいが題材のマンガです。「金魚すくいマンガ」は、おそらく日本初だと思いますが、この題材で作品を描くようになった経緯をお聞かせください。

大谷 連載に向けての打ち合わせをしている時に、担当さんの口からたまたま出た感じでした。

これが金魚をすくうということですか!と、思わず読者が思ったインパクト大の第1話のワンシーン。金魚すくいしたいなぁ。

これが金魚をすくうということですか!と、思わず読者が思ったインパクト大の第1話のワンシーン。金魚すくいしたいなぁ。


担当 最初はむしろ大和郡山市[注1]に興味を持たれたようです。

大谷 以前、大和郡山市に行ったことがあるんです。遊郭跡を見て歩くのが趣味なので。その時は大和郡山の名物が金魚だと知らなくて、まったく見てこなかったんですよ。「ポイ捨て禁止」っていう、金魚のキャラを使ったポスターは珍しかったので写メは撮りましたけど……。担当さんから金魚すくいの話を聞いていたら、せっかく大和郡山に行ったのに(金魚について)まったく触れてこなかった自分に対して、腹が立ったんです。

――それですぐに大和郡山市に取材に行ったわけですね。ということは、その時点でもう「金魚すくいマンガ」をやることは決まっていたんですか?

大谷 いえ、全然。とりあえず行ってみよう、と。

担当 「ちょっと見てきます!」みたいな感じで、すぐに行ってしまわれたんです。気づいたら「もう行ってる!」って感じでした。

――それはフットワークが軽い! 漫画家さんにしては珍しく、かなりアクティブなタイプですね。

大谷 そうですか?(笑) その時にお世話になったのが、「おみやげ処こちくや」さんです。こちらに「金魚すくい道場」があるので、そこを見に行ったんです。まったくアポなしで行ったのに、すごく優しく対応していただいて、4時間以上あれこれお聞きしました。

1巻あとがきに登場する「おみやげ処こちくや」さん。金魚すくい道場には352人も門下生がいるという。すごい!

1巻あとがきに登場する「おみやげ処こちくや」さん。金魚すくい道場には352人も門下生がいるという。すごい!


――どういったことをお聞きしたんですか?

大谷 金魚すくいのテクニックとかコツというよりも、そこに来る人たちのお話を聞かせてもらいました。

――金魚すくいを日常的にやる人たちって、どれくらいの年齢層なんでしょう?

大谷 小学生から大人まで、さまざまです。すごくハンサムでジャニーズ系の男の子がいて、近所のおばさまがその子に教えてもらいに来ていたりしました(笑)。

――おお、アイドル的存在ですね。

大谷 それからご年配の方もいらっしゃる。おじいちゃんぐらいの年の方もいるし……、「こちくや」の社長さんが69歳です。

――すごく幅広いんですね。

作中でも子どもから老人までみんな本当に楽しそうに金魚すくいに興じている。

作中でも子どもから老人までみんな本当に楽しそうに金魚すくいに興じている。


大谷 ご夫婦で来ている方もいるし、それぞれにいろいろな過去がある。いろいろな人の話をいっぱい聞けました。それで、なんか「大人の塾」みたいだなぁ……、と。

――「大人の塾」。

大谷 はい。習い事とか稽古事……じゃないですけど、そういう感じがしました。

――なるほど。では金魚すくいそのものはもちろんのこと、そのコミュニティに興味を持たれたわけですね。

大谷 そうです。いろいろ話してくれた人たちに報いたいな、という気持ちになりました。

――担当さんは「金魚すくいネタでいく」と聞いた時には、どう感じましたか?

担当 その時点では、まだどういう話になるのかは決まっていませんでした。ただ、大谷さんとは以前に『なんどでも』[注2]という読み切り作品でご一緒しまして、すごくハートウォーミングな内容というか、暖かみのある作品を描く方だと思っていました。なので、どのようなテーマであっても料理してくれるんじゃないかな、と。どんなものを見せてもらえるのか、期待感がすごくありました。

――大谷先生は、これまで原作つきの作品が多かったですよね?

大谷 そうです。話を考えるのが苦手、という意識があったんです。キャラを動かすのは好きなんですけどね。だから原作つきの作品は、むしろこちらから「やらせてください」という感じでした。

担当 大谷先生が作画を担当した『リトル・マエストラ』[注3]という作品を読んだ時に、大谷先生は原作をうまく自分のなかで消化して、セリフなんかも自分の言葉のようになじんでいると感じました。それから、なんといっても絵がうまいですよね。「この絵を嫌う人はいないだろう」と。女性作家らしい繊細さと、青年誌らしいダイナミックさの両方を持つ希有な作家だと思ったので、「ぜひオリジナルをやりましょう」とお声かけさせていただきました。

――これ、失礼な聞きかたかもしれませんが、「この題材(金魚すくい)でいいのかな?」とか考えませんでした?

大谷 それまでにありませんでしたからね、金魚すくいマンガ(笑)。でも、それはまったく気になりませんでした。それよりも、恋愛色をどれくらい入れたらいいんだろうとか、金魚すくいのテクニック面をどれだけ描けばいいんだろうとか、そのへんのバランスで悩みました。


  • 注1 大和郡山市 奈良県の奈良盆地北部にある市。「金魚の町」として有名で、市内には金魚の養殖池として使われる池が点在する。戦国時代に郡山城の城下町として発展した歴史があり、今も城下町の風情が残る。
  • 注2 『なんどでも』 2014年3号「BE・LOVE」に掲載された特別読み切り。野球選手として選手生命を絶たれた主人公と張り子作家の先輩とのハートウォーミングストーリー。
  • 注3 『リトル・マエストラ』  映画『リトル・マエストラ』のコミカライズ。原作はサーフ・坂口。「ザ・マーガレット」(集英社)にて前後編で掲載された。

単行本情報

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  • 『すくってごらん』第2巻 Amazonで購入
  • 『すくってごらん』第3巻 Amazonで購入

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