荒木先生から受けた影響
――荒木先生の下では、どういった立場だったんですか?
三部 チーフという名前は使ってなかったですけど、自分より下のスタッフの仕事のチェックなどもしていました。 俺よりウマイ人もいたんですけど、なんか俺、描くのが異常に速くて 、たくさんの枚数をこなしてたんですね。そうしたら、 見開きとか大ゴマとかが俺のところに回ってくるようになったんです。 それでいつのまにか俺がその役になったんですよね。
――荒木先生の絵はすごく独特ですが、今の三部先生の絵が似ているわけではありません。荒木先生の絵に“引っ張られる”ことはありませんでした?
三部 荒木先生の絵は、「人の絵」という感じがしています。 似せて描こうと思えば描けると思うんですけど、あまり引っ張られることはなかったですね。 自分の絵に与えた影響としては、カプコンの格闘ゲームのほうが強いです。 『ストリートファイター2』や『ヴァンパイアセイヴァー』、『ヴァンパイアハンター』とか。
――では、荒木先生から影響を受けたと思うところは?
三部 それはハッキリしてます。荒木先生は、無茶な構図の絵を描くんですよ。 パースの付け方が極端というか。 それを俺らアシスタントが強引に整合性を取って描いていくんですけど、 そうするうちに、いろいろな角度からモノを見る感覚が身につきました。 モノをどの位置から見ても形を取れるように、自然になったんですね。 それはすごく助かってます。背景とか俯瞰の絵とか、好きなんですよね。
――『僕だけがいない街』(以下『僕街』)では、「マルクマ」とか「つきかげ」とか、 デパートのシンボルがよく出てきます。俯瞰があって、シンボルがあって、 そしてキャラクター……と。大きいところからだんだんカメラが近づく感じですね。
担当 そういう表現ってマンガ的にはオーソドックスだけど、 すごくわかりやすいんですね。そういった細かい“伝える努力”がしっかりしているので、 三部さんのマンガはまず「読みやすい」んですよ。 マンガを熱心に読む人も、たまにしか読まない人でも、 誰が読んでもすぐ入っていける。と、自分は思っています。
『僕だけがいない街』が出来上がるまで
――『僕だけがいない街』は、どのような構想でスタートしたのでしょうか?
担当 最初の打ち合わせ段階では、もっとヒューマン・ドラマになる予定でした。 1巻のカバーの、「雪のなかに少女がひとり」といったコンセプトが、 作品の初期イメージです。
担当 それをベースにいろいろな要素を足していって、 現在のようなサスペンス・ドラマになりました。
――その「いろいろな要素」は、どう取捨選択したんですか?
三部 それは自分では判断しきれないので、 「こういうのはどうだろう?」と担当さんと話し合って決めていきました。
担当 最初に「ヒューマン・ドラマをやろう」という話になったときに、 はたしてそれでお客さんをつかめるのだろうか、僕は不安だったんです。 「ヤングエース」読者の興味とかけ離れている気がして。なので そういった読者に毎月読んでもらえるような要素を入れてはどうか、と提案をしました。
――では時間をさかのぼるSF的な要素は、最初はなかったんですね?
三部 話し合いを進めていくなかで出てきました。過去に戻るアイデアにしても、 最初は一度だけ過去に戻る話だったんです。だけど行ったり来たりするほうが おもしろいんじゃないかと思いまして。
――タイムトラベルや同一時間を繰り返す映画作品としては、 古くは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ターミネーター』、 最近でも『LOOPER/ルーパー』などがありました。
担当 昔から ずっとあるんですよね。題材にしやすいからなんでしょうけど。
――角川書店さんですと、『時をかける少女』もあります。
担当 言われてみれば(笑)。いや、そこはまったく考えてませんでした。
三部 俺はちょっと意識してましたよ。
担当 え、本当ですか?
三部 こういうシリアスな路線を角川さんで描けたらいいな、という意味ですけど。 そうすればほかの連載との描き分けもできますからね。 スクウェア・エニックスさんのほうの連載は突き抜けたアクションを、 思いっきりふざけても描けるので、シリアスな作品を描きたかった。
――“再上映(リバイバル)”のアイデアは、どのタイミングで決まったんですか?
三部 第1話が完成する直前です。ですから、描いている時点では、 まだ“再上映(リバイバル)”という名前はついてませんでした。
担当 覚えています。 これは用語化したほうがいいだろう、ということで第2話からつけたんですよね。
――三部先生自身、「戻りたい過去」はありますか?
三部 「この時点に戻ってやり直したい」って話、よく聞きますよね。 でも俺、それないんですよ。だからよくわからないです。 結果的に今と同じ状態にたどり着くのであればいいけど。 ああ、「あの日にもう3~4時間仕事していれば、 今の忙しさはないよ」とはよく思いますけどね(笑)。 3、4日前のサボリのツケが響いているときは、「戻りたいなぁ」って思います。 ……そうだなぁ、戻りたいとしたら、仕事をしなくていい時代かなぁ(笑) 子どもの頃の、好きなことばっかりやっていられる時代ですね。
――過去編の悟と同じ年(小学5年生)の頃は、どんな子どもでした?
三部 毎日、時間を持て余した子どもでした。やることがなにもなくて、 粘土でいろいろなものを作ってました。うーん、やたらと粘土細工ばかりやってましたね。
――絵よりも粘土ですか。
三部 せっかちなので、ストーリーマンガをよりも粘土の方が即「ヤマ場」を作れるという意味で、性に合っていたのだと思います。
中編はコチラ!
【インタビュー】いま考えているラストは変わるかもしれない……!? 『僕だけがいない街』三部けい【中編】
後編はコチラ!
【インタビュー】伏線リストと分岐が書かれた秘密のノートがある!? 『僕だけがいない街』三部けい【後編】
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取材・構成:加山竜司
撮影:辺見真也