1989年、『サイボーグ009』や『HOTEL』などで知られる石ノ森章太郎は、マンガのことを「あらゆる事象を表現できる」メディアとして、その名に「萬」（よろず）の字を当てた「萬画」という概念を発表しました。
それから25年あまり経ち、実際にマンガは、ホビー・料理・政治・宗教……と、実際にありとあらゆるテーマの作品を生み出してきました。前述の石ノ森が発表した『マンガ日本経済入門』から本格的にスタートしたといえる“ビジネスマンガ”も、現在は書店でひとつのコーナーが作られているほどです。

『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』『岡崎京子の研究』などの著書で知られる、ライター/ネットワーカーのばるぼらさんも、今もっとも注目しているジャンルはビジネスマンガとのこと。
そこで今回は、マンガというメディアならではの文法・技法を使って、ビジネスというテーマを作品へと昇華している注目のビジネスマンガ・3作品を、ばるぼらさんに挙げていただきました。

ばるぼらさんイチオシの3作品！

『まんがでわかる 7つの習慣』フランクリン・コヴィー・ジャパン（監）小山鹿梨子（画）

『まんがでわかる 7つの習慣』
フランクリン・コヴィー・ジャパン（監）小山鹿梨子（画） 宝島社 \1,000+税
（2013年10月11日発売）

2013年の『まんがでわかる 7つの習慣』がシリーズ累計124万部のヒットになったように、ビジネス書や自己啓発書のコミック版が増えてきています。

「新文化」1月29日号によれば、とくに女性からの支持を受けているそうで、2014年に出た『まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論』、『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』も好評のようです。
「マンガで知識を得るなんて……」という人はさすがに減っていると思いますが、石ノ森章太郎先生の『マンガ日本経済入門』（1986年）をはじめ、大人が読んでもよさそうな学習マンガの歴史はけっこう長いです。意識して書店を探してみると、『マンガでわかるフーリエ解析』とか『マンガでわかるコンクリート』とか、「こんなことまでマンガで学べるのか！」と驚く人もいるのではないでしょうか？

『まんがでわかる7つの習慣』は、コンビニで手に取りました。「昔『7つの習慣』ってビジネス書あったけど結局何が書いてあったんだろ」という興味本位の読者に応える、イージーな内容で、頭にスラスラ入ってきました。よくできたマンガ化だと思います。
それにしても「7つの習慣」の7つは1巻目に全部載っているのに、その後シリーズ全部で4巻も出てるんです。2～4巻に何が書いてあるのか、そっちのほうが気になりますよね。

『ザ・ゴール コミック版』エリヤフ・ゴールドラット/ジェフ・コックス（作）岸良裕司（監）青木健生（脚）蒼田山（画）

『ザ・ゴール コミック版』
エリヤフ・ゴールドラット/ジェフ・コックス（作）岸良裕司（監）青木健生（脚）蒼田山（画）
ダイヤモンド社 \1,200+税
（2014年12月5日発売）

『まんがでわかる7つの習慣』のヒットを受けて、「昔のビジネス書のヒット作をマンガ化したらもう一度ヒットを狙えるんじゃない!?」というブームのなかで出た1冊といえます。

オリジナルは「制約理論（TOC）」をストーリー形式で解説する内容で、17年間翻訳出版が禁じられていたという有名作。
このコミック版はただの翻訳ではなく、日本を舞台に変え、日本向けのアレンジが加えられています。ビジネス書のコミック化を考えている人には、なかなか参考になるのではないでしょうか。

『ナナのリテラシー』鈴木みそ

『ナナのリテラシー』第1巻
鈴木みそ KADOKAWA \650+税
（2014年1月25日発売）

『ナナのリテラシー』第1巻は、電子書籍で商業的に復活する漫画家を取り上げたストーリーです。こと細かく電子書籍についての解説がされるところが、ビジネスコミックという視点からも楽しめます。

作者の鈴木みそ先生が、実際に電子書籍で1000万円売り上げたという実績があるからこその内容で、「どこまで本当なんだろう？」という読後感がキモ。
ザッツ・エンターテインメント！

ご協力者：ばるぼら

ネットワーカー、古雑誌蒐集家、周辺文化研究家。

マンガ関連の著作は『岡崎京子の研究』（アスペクト）と『消されたマンガ』（鉄人社、赤田祐一と共著）があります。

マンガはなほるる（@Nahoruru）から借りて読むことが多いです。