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グンマーがついに文明開化!? 県民もびっくり、「すき焼き県」宣言!! 【週刊「このマンガ」B級ニュース】

2015/11/24


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「グンマ、“すき焼き県”を宣言する」について。


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『スキヤキ(上を向いて歩こう)』
4P.M.(For Positive Music) ポリドール ¥903+税
(1994年12月10日発売)

来る11月29日は、「ぐんま・すき焼きの日」である。

……みなさんご存知でした?
いや、知らなくても無理はない。なにしろ「ぐんま・すき焼きの日」が制定されたのは今年から。まだ知名度が低い、新しい記念日なのだ。

そもそもすき焼きは、明治の文明開化とともに横浜あたりで食べられるようになったのだから、群馬とどう関係があるのか? 
「群馬県すき焼きプロジェクト」によると、上州和牛、こんにゃく(生産量全国1位)、下仁田ネギなど、すき焼きに必要な食材がすべて群馬県産でそろえられるところに由来しているらしい。
ようするに「地産地消ですき焼き!」というわけだ。

「B級グルメで町おこし」がスタンダード化した昨今、むしろ「庶民のぜいたく」に焦点を絞ったマーケティング戦略は、意外と見落としがちな穴場だったのではないだろうか。

群馬とすき焼きについての詳細は、群馬県のHPを見ていただくとして、今回は「庶民のぜいたく」すき焼きが、マンガのなかではどのような描かれ方をしているのかを見ていこう。


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『銀魂』第12巻
空知英秋 集英社 ¥390+税
(2006年4月4日発売)

空知英秋『銀魂』では、記念すべき第100回目(単行本第12巻「第百訓 鍋は人生の縮図である」)に、大晦日を迎えた万事屋の3人が鍋を囲む。

銀時、新八、神楽の3人は、数少ない肉を食べようとして、お互いのスキをうかがいつつ心理戦を展開する。肉に対する執念が炸裂し、しれつなすき焼きバトルへと発展していくのだ。
結局、神楽が肉を食べることになるのだが、すき焼きに入れていた肉は、長年牛肉だと信じこまされていた豚肉だったことを知り、愕然とする。


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『ちびまる子ちゃん』第1巻
さくらももこ 集英社 ¥390+税
(1987年7月発売)

豚肉で代用する“貧乏あるある”は、さくらももこ『ちびまる子ちゃん』第1巻の巻末に収録された作者のエッセイマンガ『うちはびんぼう パートⅡ』でも見ることができる。

さくら家では「牛とブタが2対3の割合」だったそうだ。作品掲載は85年の「りぼん」冬号だが、さくらももこの幼少時代の回想なので70年代の食卓事情がうかがえる。
感涙にむせび泣きながら食べるおじいさんの顔は必見だ。
現在でも豚肉より牛肉のほうが高価だが、80年代に輸入牛肉の規制が緩和されるまでは、いまよりももっと割高だったようである。
アラフィフ世代からは、わりと「うちもそうだった」との話はよく聞く。


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『飯盛り侍』第1巻
井川公彦(作) やまだ浩一(画) 双葉社 ¥600+税
(2005年2月28日発売)

意外なことに、すき焼きは戦国時代マンガに繰り返し登場する。

まずは『飯盛り侍』(井川公彦・作 やまだ浩一・画)では、第1巻収録の第5話「開襟の飯」。主人公の弥八は賄い方として、島津軍と戦う龍造寺軍の先陣に従軍する。
弥八はかまどの上に鋤(すき)を鉄板のように組み合わせ、そこで猪肉をネギとあわせて焼いて「鋤焼き」をつくる。これは「すき焼き」の語源ともいわれているエピソードである。


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『へうげもの』第3巻
山田芳裕 講談社 ¥514+税
(2006年8月23日発売)

そして山田芳裕『へうげもの』の第二十八席「SUKIYAKI」(単行本3巻収録)では、山崎の戦いのおり、主人公・古田左介が義弟の高山右近の陣を訪れたときに、キリシタンの高山右近が「伴天連(パーデレ)から食べ方を教わった」として、鉄製の胴や鋤の上で牛馬の肉を焼き、味噌で味付けして食べている。

高山右近は「鋤にかけて……」「これを『数寄焼』と銘しては如何でしょう」と言うが、これは明治初期の「牛鍋」の食べ方であり、時代を経るにつれて味噌から割下での味付けへと変化していき、そして現在のすき焼きのスタイルになっていったのである。


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『信長のシェフ』第10巻
西村ミツル(作) 梶川卓郎(画) 芳文社 ¥600+税
(2014年7月8日発売)

さらに『信長のシェフ』(西村ミツル・作 梶川卓郎・画)では、戦国時代にタイムスリップして信長の料理人になった主人公・ケンが、室町将軍・足利義昭に「すっぽんのすき焼き」を振るまう。 義昭の定めた「元亀」という元号にかけ、義昭を挑発するための料理として用いたのである。

歴史マンガでは、人物の先見性を示すために、その時代には本来は存在しないものを発案・発明させるエピソードが少なくない。必要な品物さえそろっていれば、あとはアイデア次第で、その時代にも存在した可能性はある、という解釈である。
そしてそれが料理となると、かなりの確率で「すき焼き」が採用されるのだ。つまりそれほど「すき焼き」は「革新的なもの」であったわけで、さらに現代の日本人(=読者)にとってなじみがあり、親しまれている証拠ともいえる。


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『扶桑社文庫 かっこいいスキヤキ』
泉昌之 扶桑社 ¥590+税
(1998年10月発売)

もちろん、料理マンガにもすき焼きは登場する。
なかでも異色なのが泉昌之『かっこいいスキヤキ』だ。

ご存じの方も多いと思うが、泉昌之とは、作画担当の泉晴紀と原作担当の久住昌之(『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』の原作者)による共同ペンネーム。
泉昌之名義では、近年では『食の軍師』などを描いている。

この『かっこいいスキヤキ』は初出が1983年(短編「最後の晩餐)であり、文庫版は初期短編集といった趣だ。
主人公が偏執的に「憧れの食事=スキヤキ」に対するこだわりを述べていくのだが、みみっちぃのである! そのみみっちさ、小庶民的なこだわりこそが本作の醍醐味であり、だれもが情けなくも共感してしまう。
「みんなテメーがどれだけ肉喰うかばかり考えやがって」なんて、最高にみみっちくて、“あるある”感タップリだ! この「重箱の隅で愛を叫ぶ」感こそが、泉昌之の真骨頂であり、本作にそのひな形を認めることができるだろう。


このようにすき焼きは、料理マンガは当たり前、ギャグマンガにしてもよし、時代劇でもアリ、といったオールラウンダーぶりを発揮しているのである。
とどのつまり鍋物は、「だれと食べるか」が大事だったりするんですよね。

そろそろ寒くなってきたし、今晩あたり、すき焼きでもどうですか?
え、ひとりぼっちの夜?
……上を向いて歩きましょう、涙がこぼれないように。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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