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『漫画として現れるであろうあらゆる恋のためのプロレゴメナ』 窓ハルカ 【日刊マンガガイド】

2017/03/20


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『漫画として現れるであろうあらゆる恋のためのプロレゴメナ』


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『漫画として現れるであろうあらゆる恋のためのプロレゴメナ』
窓ハルカ リイド社 ¥648+税
(2017年2月24日発売)


この長いタイトルの元ネタは、哲学者カントの『これから現れるであろうあらゆる形而上学のためのプロレゴメナ』から来てるとみて、間違いないだろう。
「プロレゴメナ」は序論という意味で本作にも登場。

「性欲か恋かなんてどうでもいいですよ
どちらも気持ち悪いので変わりありません」

っていってしまう女性が出てくる。出てくる、というかこれが主人公。
早逝した天才、華倫変を思わせるラフな画風で、この男性嫌悪はなはだしい人物を主人公に、彼女が童貞男にいい寄られるという物語だ。
(主人公は漫画家志望で、狂ったこだわりのために持ちこみを拒否され続けてるんだけど「様々な画風」が登場するひとコマがあり、そこでの描き分けを見るかぎりは、このラフな感じは著者の意図的な選択であることがわかる)

なんだかんだいって主人公も童貞男も美男美女(少なくとも童貞男からは主人公はかわいく見える。僕もかわいいと思う)なので、社会階層低めなだけで、けっきょく『逃げ恥』じゃないかと思われるかもしれない。

だが本作の主人公2人は単に「社会階層低めの非モテ」という次元をはるかに超える、いや下回る、頭のわるs...いや、頭が悪いというか、視野が狭いのかな、ゴムホースで放水する時に、口を圧迫すると勢いが増すように、2人の視野は狭くて勢いがすごい。
このすごい勢いのせいで、やたら吐くし、やたら怪我をする。
これなあ、戯画化されてるけど、リアルに共感しちゃうとけっこうあるんだよなあ……。
視野がどうこうというか、こういうふうに生きてしまう人けっこういるんだ、共感してツラくなる人もいるかも知れないけど、『タラレバ』や『逃げ恥』は勝ち組じゃねえか!っていう憤りのある人にはオススメしてみたい。岡田あーみんmeets『逃げ恥』、feat.華倫変て書いたらだれか怒るかな。

バカだー! と言って笑うもよし、「これは自分だ……」と共感するもよし、ありえないギャグ展開を笑うもよし、なんだかんだいってちゃんと物語を進展させてる著者の鬼才に感嘆するもよし。
話題になるだけある強めのヤツ。これからの展開が楽しみ。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn
Twitter:@n11books

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